(巻二十三)連添うて宝なりけり秋扇(加藤郁乎)

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(巻二十三)連添うて宝なりけり秋扇(加藤郁乎)

9月6日金曜日

成人女性

蔓延っていると云えば成人女性が自分の式服に黴を蔓延らせてしまい、洗濯屋に持ち込むはめになった。

連添うて宝なりけり秋扇(加藤郁乎)

とも云えますが、

烙印や主婦失格の厨黴(多田羅紀子)

とも云えます。

しかし、うるさく思うこともあるが、とにかく賑やかで居てくれることはありがたい。
老夫婦間に会話がないということは珍しくはないようですが、あたしたちの場合は会話が途切れません。成人女性がなにか見つけ出してくれるのであります。
因みに、夕食の話は串田孫一に随筆についてであり、成人女性は氏の随筆を『ちゅうがくせいの勉強室』というNHKのラジオ放送のテキストに掲載されていた小品で知ったそうです。成人女性はその作品の幾つかについて話し、更に中学当時のことを話し、いつものことではありますが、貧乏で大学に行けなくて悔しかったで終わりました。

あたしは午後、掛かり付けのクリニックで受けた区の健康診断の結果をうかがいに出掛けた。
お見立ては、循環器科、呼吸器異状なし。体重を少なくとも五キロは落として痛んでいる臓器の負担を減らせ。その臓器の定期検診は継続せよ。
幼稚園の先生が入園面接でその子の受かる大学まで見抜いてしまうように、ベテラン医師はこいつは後何年くらいだなと察しがつくんだろうなあ?

冷し酒五臓の一つ病んでをり(石井信生)

酒を飲むのも飽きた。習慣として安い酒を飲むのは止めよう。昼めしどきに旨いもので少し飲もう。

本

「料理屋の話 - 村上元三」中公文庫 江戸雑記帳 から

を読みました。
日本橋の「百川」、鳥越の「八百善」、柳橋の「川長」は知っていた方が他の作品を読むときによろしいようだ。

《八月十五日、陰りて風涼し、宿屋の朝飯、鶏卵、玉葱味噌汁、はや小魚つけ焼、茄子の香の物なり、これも今の世にては八百膳の料理を食するが如き心地なり、飯後谷崎君の寓舎に至る、鉄道乗車券は谷崎君の手にて既に訳もなく購い置かれたるを見る、雑談する中汽車の時刻迫り来る、再会を約し、送られて共に裏道を歩み停車場に至り、午前十一時二十分発の車に乗る、(中略)新見駅にて乗替をなし、出発の際谷崎君夫人の贈られし弁当を食す、白米のむすびに昆布佃煮及び牛肉を添へたり、欣喜措く能はず、食後うとうとと居眠する中山間の小駅幾個所を過ぎ、早くも西総社また倉敷の停車場をも後にしたり、農家の庭に夾竹桃の花さき稲田の間に蓮花の開くを見る、午後二時過岡山の駅に安着す、焼跡の町の水道にて顔を洗ひ汗を拭ひ、休み休み三門の寓舎にかへる、S君夫婦、今日正午ラヂオの放送、日米戦争突然停止せし由を公表したりと言ふ、?も好し、日暮染物屋の婆、鶏肉葡萄酒を持来る、休戦の祝宴を張り皆々酔うて寝に就きぬ、》

荷風の『日乗』ですが、《八百膳》は《八百善》のことでしょう。