(巻二十三)花閉づる力の失せてチューリップ(曽我鈴子)

f:id:nprtheeconomistworld:20191010061438j:plain


10月9日水曜日

気が付かぬうちに隣家は引越を終えたようだ。今朝みかんちゃんに水遣りしていたところ隣家のご出勤に出合い会釈を交わした。中年の家長らしきと高校生らしきが二人、三人揃ってのお出掛け姿である。
何しろ、近所運が悪かった経験から成人女性は近所にナーバスでありして、上記を報告すると少し安心したようです。

引越の本意は言はず花貝母(芦刈晴子)

パソコン

今日もお役所に相談事があり、お台場のお役所に直行致した。
途中、新橋駅でニコチンの補充をしたが、ついでに機関車を一撮致した。顔本の鉄ちゃんクラブに入れてもらったがシェアーする絵がありません。一月に一回くらいは投稿したいのですが、置物でお茶を濁すことにします。

夏草に機関車の車輪来て止まる(山口誓子)

成人女性

台風対策を講じるとのことで、水、カップ麺、保存米飯、ビスケット、その他の調達命令が出ました。重かった。

台風の眼の中に居る海坊主(猿人)

本

「ドクトル、閑中忙あり - 北杜夫」中公文庫 どくとるマンボウ航海記 から

をコチコチ終わりました。マンボウ先生は医者ではない!医者かもしれないが“やぶ”だと信じて疑わなかった。以下が法螺でないとするとご立派なお医者さまだ。
そう言えば『青春期』を読んだときに茂吉が“お前は手先が器用だから外科に向いている”と言ったという一節があったように思います。マンボウ少年は蝶の採集が好きで器用に標本にしているところを茂吉が見てそう言ったという流れだと勝手に記憶しております。

茂吉の在庫は数首ですが、くらい気分の今宵のあたしは

ひた走るわが道くらししんしんと
堪へかねたるわが道くらし(斎藤茂吉)

を選びました。

以下、マンボウ先生のご活躍です。

《私はそれでも日に平均四・六名、延べ七六〇人の患者に投薬したり注射したりしている。一人も患者がこない日もあれば二十名以上の日もあった。もっとも患者とはとても言えず、臼でひいても死にそうもない身体で飯を六杯ずつ食べ、更にもっと食べようというコンタンで腹の薬を貰いにくる者もある。こういうのは仕方ないから治療簿に「消化不良」と記入する。
チーフ・エンジニアが綿をマッチ棒の先につけて耳をぼじくっていたら、綿だけ耳の底に残ってしまった。反射鏡をつけて覗くと、奥も奥、一番奥の鼓膜のところにぴったりはりついている。そいつを取ろうとするといかにも痛そうでなかなかとれない。私もこれには弱ってしまい、そこに二人ばかり注射にきたので、あとでゆっくりやろうといったん帰したところ、彼はいかなる魔術を用いたのか自分で突っつきだしてしまった。「ドクター、あれ、とれましたよ」と嬉しそうに言うが、「外聴道異物」などと書くのもバカバカしいから私は治療簿にこう記入した。「天下の奇病。使用薬品、なし。処置、魔術」
サード・エンジニアが歯ぐきをはらして唸りながらやってきた。熱も三十九度以上ある。これは歯の根っこに膿がたまって圧迫するので大変に痛いものだが、歯の底を破って膿を出すなんて芸当はできねし道具もない。道具があったとて、私は頭蓋骨に穴をあけて脳の一部をきる手術ならやるが、歯医者のような野蛮極まりない真似はとてもできぬ。ペニシリンを注射しても歯の病菌は嫌気性菌が多いから効果はないのである。そのうち熱は高まるし唸り声も高まるので、とうとう歯ぐきを横から切って膿を出してしまうことにした。最初ちょっぴり切ったらすぐ傷口がふさがって再び腫れてきたので、次ぎには麻酔剤をたっぷり注射しておいて十文字切開をした。彼は大粒の涙をこぼしたが、私とて死ぬる思いだった。ヘイツィ・エイビブと呼ばれるホッテントットの神の加護により、サード・エンジニアは死なないですんだ。 》

ご活躍は続きますが、追ってご紹介いたします。