駄句類句帳 - 駄楽

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昔の話です。


令和元年

桜島見しが今年の一大事
三十年経ちて二人のクリスマス
著者と酌む読後のホットウイスキー
舞い降りて一日二日は彩落ち葉
十畳に十四畳の炉の温し
電球の切れるが如く終わりたし蛍光管の明滅怖し
タバコ吸ふ石のベンチや尻寒し
影像を読み解く医師やそぞろ寒
立冬や寝起きの悪き妻である
人に世話かせて野良の冬構え
黄落や散りぎわばかり見るさくら
電飾を取り付く小枝あやまたず
天高し佳句に引かれて駄句類句
初孫の祝い返しや芋と柿
我妻に呉し姑や彼岸花
担ぎ手の腹の出ている秋祭り
植物の蜜柑の鉢に水を遣る
五月雨やストーブに翳すサルマタ
今年米間近を告ぐる二割引
老いどちや枇杷の実啜り角打ちす
桜島就職祝いて乾杯す

平成三十一年

薫風や息子帰にけり葉の騒ぐ
雨や打つ風に吹かれて散りたくも
子のブログ見て就職を確かむる
筒先の管は解かれて桜咲く
水温む海ふと渡り桜島
ヤフーからデータ引っ越す梅咲く日
憂いなく今が死に時ちゃんちゃんこ
母親は捨てられる女春寒し
鍋焼きや舌で転がすトッピング
電球や寿命較ぶる
老いの春
菜の花や喰われる前に咲きにけり
一月を勤めて締めて五十時間
鼻くそも目くそも乾き冬旱
本年は酒で潰さぬ暇潰し
積み上げて取り崩さずに寒卵

平成三十年

転職も二度目は慣れて晦日そば
冬来たりなば春とはシェリーかな
君と僕どちらが先きか年賀状
歳晩や旧社に掛ける里心
定期券取り戻したる神無月
手探りのボタンダウンや穴惑い
定期券払い戻して秋深む
独酌の送別会の二次会の
空蝉や七日を切りし出勤日
カーテンとシーツの洗濯日和かな
台風や河岸に上がらぬ青魚
首筋にペット茶あてて立て直し
梅雨深し終着駅は始発駅
年金手帳夫婦で捜す五月闇
水元や坊主覗ける白日傘
初夏やここだけ話で五合酒
宿六の家居七日目八連休
ハナミズキ姉妹の茶話の余り菓子
初物や懐具合の冷奴
いいことは探せばてくる種袋
夜桜や俺は群れずに先に散る
ハンコウも一つに纏め老いの春
春嵐滴染み入る足の裏
バスカーや孵化(かえ)つてくれよ寒卵
噴水や枯れ野の末に勃起せり
寒々と尿の色に黄泉の国
営業の出ていく巷に雪が降る
パック餅尻から膨れ転びけり
あがらえず家路失う猫の恋
生足も凍る掟か女子高生
逆算の起点見えざる長距離走
匿まわる団地の犬の息白し
働いてあと五年はと年初め

平成二十九年

五七五に呟き歳を越しにけり
密買や年末年始の隠し酒
極月や夏までまでの定期代
携帯を無くして熊の冬籠り
働けて減額支給や
手締め
波長合う昭和歌謡や耳覆い
亀有の筑前加賀のモツ合戦
別れ告ぐ歯に舌先で暮の冬
着膨れや乗らんと体を斜に構え
鍋洗う鍋の温もりいただけば
追い焚きをするならしなよしてごらん
幸せと思えと言わる椿カフェ
しぐるるやいけるとこまで多作多捨
一キロを十個に分けし神無月
子のみやげなき秋の夜の肩すかし
ご配慮の退社時間の繰り上げの寄る年波の秋の夕暮れ
骨軽し壺は重たし秋の空
秋風や孫たちの居て家族葬
死なざれば受給資格や小鳥来る
蝉啼くやハウスバイバイ判二つ
売家の穂を垂る草をむしりけり
ジェット機の慌て飛び立つ野分きかな
柴又の音の届きし大花火
区役所でお客様とやアマリリス
居眠りを大目に見られ鼻っかぜ
下総の基地に降り行く爆音を頼もしと聞く我に驚く
マンションにダンプ突っ込む目借時
藤棚や写生見せ合う婆二人
噴水や二十五度超え存在感
団地とは函と内箱桜散る
東京の江戸が散りゆく花見かな
見下ろせば団地に隣る桜道
春愁や覚悟を迫る顔の紙魚
降る雪や肉まん懐き梶思う
木枯しの道なりに来る安普請
着膨れて彼方に弛みし靴の紐
初場所やあと三場所の土俵かな
受験子やちからになれぬ父連れて
コーラクや今年は煮込みと二合まで
需要なき欲求に供給福袋
あつけなき転結願い初参り
年寄ればほかは省きて雑煮食う

平成二十八年

大黒に一年を謝し五百円
図らずも畳のうえで逝った寅
忘年会青い山脈変年会
冬の路地荷風になつたつもり酒
空白に歯を生せけり日短
雪だるま近所にいまだ子がいたり
手助けや明日は我が身の時雨哉
案外の実を結びけり庭みかん
物書くに電知電脳朧月
運動会雨天決行賞味期限
柏そごついに閉店九月果つ
マジックの消えてラジオの変声
紅顔の少年さんまやほろ苦し
心配の種を飛ばして西瓜喰う
一と月で青葉隠れの空家かな
生まれ来るほどのところかほととぎす
四月馬鹿摩つてみたや菩薩の背
細胞や小春日和のビラ配り
付き添いの院内百態あたたかし
開いたと君白梅を指しにけり
存在のたとえば冬の扇かな
色夢におもちゃ手すさぶ寒の床
牡丹雪や空も画する丸の内
一駅で桃黒となり寒夕焼

平成二十七年

あの人が最後の女が冬の果
夜長とは言ってはおれぬ湯冷めかな
柿添えて貧しからざる昼の膳
あきらめのいい葉わるい葉秋の朝
秋の暮文句は言えぬ五人扶持
生身魂拝んでみたや女夜叉の背
遠雷や帰りを急ぐわけもなし
寒の月手元の恋を照らしけり
雨音に枕安堵す寒の朝

平成二十六年

考えて今宵の鍋を定めけり
陽だまりや居ても目立たぬ老いの苑
足腰のしっかりしたる時雨かな
晩秋に産業医説く老病死
一掃きの枯れ葉摘みけり浮世床
見上げれば真半分の秋の月
湧く雲や振り返れば鰯雲
独居やイヤヨイヤヨの扇風機
譲られて夏のつり革揺れにけり
早乙女や帯でまとめし渋浴衣
二十日ころあいさつなしにつばめ立ち
質草やみどりは淡し初鰹
雨が討ち堀に追われし桜花
春の月なにに怯えて寝付かれず
まっつぐに舗装の継ぎ目草の筋
春雨や十色の百の傘交じり
銘酒より冬の真水の酔いざまし
重ね着や更に重ねて二重足袋
官を辞し大黒様に初詣