(巻二十五)一葉忌舞妓の通ふ英語塾(荒井書子)

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(巻二十五)一葉忌舞妓の通ふ英語塾(荒井書子)

 

三月二日月曜日

 

(顔本)

アフリカの青年から参加申込みがあり、承認いたした。グループを公開からプライベートに変更した。

 

雪よりもつめたき雨にかはりけり(板倉ケンタ)

 

(あたし)

氷雨降るなか、面接に行って参った。持って出たビニ傘が強風で破れてしまい困った。しかし、そこに今日の運がありました。公園の入口に置き去りの新ビニ傘が立て掛けてあったので壊れた傘と置き去り傘を交換させていただき難を逃れました。しかし、ここで今日の運を使ってしまった感はあるな。

 

夫の恋見て見ぬふりの破れ傘(佐藤文子)

 

今までの面接は出来上がっている話のセレモニーとしての面談であったが、今日のは五十年ぶりに真剣面接であった。

 

やはり勤労意欲と云うか働くことの必要性を問われると答えが難しい。結構ストレートな質問で「年金も出ているでしょうが、お困りですか?」ときた。この歳までこういう人生を送って来て現状食うに困っていると云えば、それはそれで無分別を疑われるし、食うには困っていないと云えば暇潰しと云うことになり、それはそれで動機が弱いし。

「引き籠りはつらいので、社会との繋がりを持っていたい。」と苦しい答えをしたが、今後はどういう答えが宜しいのか読者諸氏のご助言を賜りたい。

此方の売りのところは相手も認識があり、確認として質問が出て、そこは丁寧に回答申し上げた。

パートの爺さんの面接だが20分くらいだったかな。

さて、どうなりますやら?パートと言えどもこんな時に雇えるのかしらん?

 

死にぎはの恍惚おもふ冬籠(森澄雄)

 

終わって亀有に戻りまだ客のいないおでん屋で一杯いたした。やはり外に出ると何かと金を遣うな。

 

飲めるだけのめたるころのおでんかな(久保田万太郎)