(巻二十五)渡鳥視るマネキンの無表情(曽我部東子)

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(巻二十五)渡鳥視るマネキンの無表情(曽我部東子)

三月四日水曜日

パソコン・セキュリティ・サービスが定期検診をしてくれたようだ。いわゆるヤバいサイトには接触していていないので大丈夫だとは思うが、あたしには見えない、分からない世界である。
以前は個室ビデオのPCなどから無料ポルノサイトにお邪魔していたが、さすがにそのような場所からは足が遠退いた。
酒色というが、色が薄れていくのはともかく、酒も欲しなくなってきたのはよろしくない。一昨日もおでん屋に入りはしたが、酒を楽しめず早々に店を出てしまった。新しい境遇に馴染めないためか、今のムードが酒を不味くするのか、体が変わってしまったのか?

熱燗や弱気の虫のまだ酔はず(松本幹雄)

寝る前にBBCを聴きながらウイスキーを舐める程度が丁度よい。今週は食物アレルギーの話でグルテンの作用を聞いた。あたしゃ何でも頂けちゃいます。

食物アレルギーで亡くなる方もいらっしゃるようですが、あたしゃそれでは逝けないようです。食中毒と云うのも交通事故と同じようなもので此方から仕掛けることができない。
急性アルコール中毒死というのを聞くが、どの程度飲めば確実なんでしょうか?教えてください。二日酔いは御免です。

(読書)

「武大想い出抄 - 山田風太郎」角川文庫 死言状 から

を読みました。

《 この人は、一方で、常人以上につき合いがよく、人集めが好きで、それどころかお山の大将になることもいやではない性質の持主ではなかったかと思われる。
晩年あれほど多くの心酔者を集めたのも、彼が、相手のいやがることをいわない、というデリケートなやさしさ、いいかえれば先天的に犀利[さいり]な観察眼を持っていたせいもあるが、根本的には人間大好きの性格が人々に反応したからだろう。
私は色川氏がまだ魔力を発揮しない時代からの知り合いなので、後年になってもそんな魔力を感じなかった。私がまた、そういう魔力に鈍感無頓着なせいもあるけれど、色川氏もまた、この相手が魔力を感じるか感じないか、鋭敏にかぎあてる能力の所有者であったと思う。
晩年には彼も、自分の持つ魔力のようなものについて自覚し、自信を持ってきたのではないか。あと十年生きていたら、彼は文壇の一教祖となるどころか、色川教か武大教か、新興宗教の開祖になったのではないか、とさえ私は考える。》

色川武大氏を偲ぶ随筆はこのほか、阿刀田氏、吉行氏がお書きになった作品が手元にございます。
氏は山田氏が語っているように多くの人に慕われる方だったのだろう。
西部邁氏が『うらおもて人生録 色川武大』の解説を書いています。奇妙な取り合わせだなあと思いながらコチコチいたし、ご紹介していますが、あの西部先生でさえ感じ入るお人柄だったのだろう。

あたたかしその人柄もさりながら(下村梅子)