(巻二十五)サルビアを咲かせて老後の無計画(菖蒲あや)

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(巻二十五)サルビアを咲かせて老後の無計画(菖蒲あや)

 

4月3日金曜日

 

(細君)

毎朝六時半に起き出す。お通じの時間が決まっているようで揺るがない。あたしとしても定時にゴトゴトし出すと今日も昨日と同じように始まったと安心する。

 

無表情同じ時刻に水を打つ(竹内宗一郎)

 

世の中が騒然としてきてあたしたちが罹患しないとも限らない。そこで布団を干しながら細君に今までのことについて感謝を陳べておいた。

しかし、細君の反応が小憎らしい。

「一回や二回じゃ足りませんよ。百回言いなさい!」だと。

 

女菩薩とまがふ妻居て懐手(吉田未灰)

 

(顔友)

顔友のゴンザロさんはジャズが好きだ。そのゴンザロさんが流行り病で亡くなっていくジャズプレーヤーの訃報をシェアーしてくる。毎日のように高齢の著名な演奏家が亡くなっていくようだ。

 

ブライトンのグループに入れて貰っているが、外出制限やパブなどの休業命令から一週間たち、メンバーからの投稿内容も落ち着いてきた。政治家の質も国民の質もやはり違うのか?

そういえば官房長官さんはあれを配ることを発表したとき恥ずかしそうにしていたなあ。あの方は悪い人じゃないようだ。

 

大マスク禍の元隠したり(安富耕二)

 

本日の句から、

 

サルビアを咲かせて老後の無計画(菖蒲あや)

 

自宅と年金にプラスして数千万円が流行り病の前の理想のようでした。

この世の中が傾くような、もしかしたら世の中がひっくり返るような、災厄のあとでも今までの老後準備が通用するのか?

制度はもつのか?お金の価値は変わらないのか?

荷風散人じゃないが、計画しても死んでみるまで分からない。

そしていつ死ぬのかが分からない。

 

それまではひっそりと、

 

稲妻や世をすねて住む竹の奥(永井荷風)

 

生きていくしかないし、ひっそりと生きていければそれはありがたいことだ。そして静かに世を去れればめでたいことであります。

 

荷風散人は敗戦で巨万の資産を失ったとはいえ、昭和三十四年(1958年)に孤独死したときに、

二千三百三十四万四千九百七十四円の預金通帳と現金を、バッグに持っていたという。餡パンが一個十円の頃の金だからすげえや!