(巻二十五)大丈夫みんな死ねます鉦叩(高橋悦子)

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(巻二十五)大丈夫みんな死ねます鉦叩(高橋悦子)

4月25日土曜日

(散歩と買い物)

親水公園→中学裏門→二丁目桜通り→生協と歩いた。あまり歩数は伸びない。三千七百歩。

生協ではスナック菓子がよく売れているようだ!棚が空っぽ!外出自粛となればカウチ・ポテトだから売れ筋になるのだろう。

あたしも髭の小瓶とつまみを買ってしまった。他に駄菓子と胡麻煎餅も篭に入れてしまった。

メモになき物ひとつ買ふ春夕べ(宮田正和)

(読書)

「地獄の数 - 宮本輝」文春文庫 巻頭随筆3 から

《 仏典によると、この地の下には大別して二種類の地獄があるという。ひとつは八熱地獄で、等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱、大焦熱、大阿鼻と名づけられている。もうひとつは八寒で、阿波波[あはは]、阿たた[あたた]、阿羅羅[あらら]、阿婆婆[あばば]、優鉢羅[うはら]、波頭摩[はずま]、拘物頭[くもず]、芬陀利[ふんだり]の八つの地獄である。この八熱と八寒を合わせて十六小地獄となり、さらにそれらが分散して一百三十六地獄と称される。ちゃんと涅槃経に記されているのだが、しかし何も死んでからだけではなく、この現実の世の中にも、そのくらいの数の悲惨やら絶望やら責め苦やらが転がっているに違いない。

どうやら自分のものでないらしい大金を、きれいさっぱり負けてしまって、そのうえ相当な借金まで背負い込んだセールスマン氏は、青ざめた顔に血の気を呼び戻そうとするかのように、何度も何度も自分の顔面を掌で叩いて、真夜中の露地を帰って行った。私はそれ以後、「お初ちゃん」には一度も足を向けなかった。

最近、眠れない夜などに、どういうわけか、「さあ、地獄やぞォ」と呟きながら卓上の牌をかき廻していたセールスマン氏の姿が、ふいに浮かんでくるのである。随分昔のことだし、すっかり忘れていたはずなのに、執拗に脳裏をかすめ過ぎる。あの人、あれからどうなったろうかと考えているうちにだんだんと薄気味悪くなり、ふと思いたって麻雀の牌をかぞえてみた。な、な、なんと、その数、一百三十六個 》