(巻二十五)仮の世の真理に触れて卒業す(木田琢朗)

f:id:nprtheeconomistworld:20200513080948j:plain

(巻二十五)仮の世の真理に触れて卒業す(木田琢朗)

 

5月12日火曜日

 

朝方、霧雨のなかを細君は医者に薬をいただきに出かけた。

あたしは机で居眠りなどして静かな時間を過ごした。

 

死に際にとつて置きたき春の雨(高野ムツオ)

 

昼前に細君はサンドウィッチを買って帰宅し、紅茶を入れて昼食となる。

サンドウィッチも旨かったが、おまけに買ってきてくれた餡パンがとても旨かった。甘さを抑えた餡がよい。

昼食後散歩と買い物に出た。普段より一時間くらい早い時間帯であり、

弁当を買って家に戻るらしい二人の老人とスレ違った。

 

行く方もいずれ来し方鰯雲(押田裕美子)

 

本日三千二百歩。

 

読書

 

「浅草のコトバと劇場のコトバ - 井上ひさし」中公文庫 パロディ志願 から

 

を読んだ。

 

《常に、そして際限もなく、新しさを競い合っているように思われる「新劇」の向うを張って、既に見捨てられた古いものをなにもかもよしとすり心算はすこしもないが、私にとってこの世で最高の劇場は、じつはすっかり寂れ果てた古い浅草にある。

その劇場の観客は、下駄ばきの地元の人々であり、集団就職で浅草の商店街に住込んでいる東北出身の若者であり、観音様にお参りを済ませた善男善女であり、銀座や新宿や六本木や赤坂でデートするのはなんとなく気恥しいと思い込んでいる総武線東武常磐線沿線の中小企業労働者のカップルであり、そしてその劇場の俳優は、これら浅草の通行人たちに、なにか怪し気な品物を売りつけようとして、ドスのきいた塩辛声を張り上げる時代遅れの大道香具師や大道商人たちである。》

 

浅草の赤たつぷりとかき氷(有馬朗人)

 

羨ましく思った事-エレベーターに乗り合わせた十階の老人と挨拶を交わした。その老人は二言発した。

 

「今日は天気が良くなってよかったね。」

「年取っちゃったけど、まだ元気だからよかったよ」

 

にこやかに自然な“よかった”が云えて羨ましい。

 

願い事-迷惑をかけずに穏やかに手短に逝かせてください。

 

顔本

 

太田さんという方とお友だちになりました。