(巻十四)このをとこ風に吹かれて尖りいる(富澤赤黄男)

3月28日火曜日

同僚のEさんが若くして突然亡くなられて一年がたってしまった。出勤途中に倒れ救急車で病院に運ばれたが助からなかった。
争いを好まない温厚な人柄で徳を以て部下の指導に当たられていた。
独り身であったが、バイク、ドラム、草野球と仲間の多い充実した生活を送られていたなかでの突然の他界であった。

朝一番でEさんのいた席に行き、同僚のマリさんがPCのスクリーンに映した遺影に御参りいたした。

誰にでも一度はあらむ今生の終の桜と知らず見る花(前田良一)

夕方、有志四、五人で偲んで酌もうということになり、声を掛けていただいた。

その中の一人から、Eさんが最期に救急隊員に残した言葉を聞いた。
“くらっとしちゃって.....”
だったそうである。
想像するに、Eさんの性格からして、その後に繋がった言葉は“お手数を煩わせてすみません。”ではなかったのではなかろうか?

冷奴ひとりひとりにわたるころ死者の話が生者にうつる(外塚喬)