駄文

先日ご馳走になった「のりおさん」からご相談をいただきました。少しでもお返しできればと以下の駄文を献上いたしました。



非居住者を輸出入申告者とする通関の留意点
 
要点:
A、税関事務管理人選任、通関業者選任、(国税通則法「納税管理人」選任)
B、輸入貨物の申告価格決定
C、他法令
3点を認識し、解決する必要がある。
 
Aについて                                                                                                                                                                      
1、税関事務管理人選任手続き
選任ついては、様式行為であり税関が提出を求める、
イ、「非居住者」の登記証明書(又は相当する証明書)、
ロ、管理人等に対する委任状、
ハ、参考資料として商流と決済等資金の流れを説明する資料
                                                                                                                                                                   
税関様式「税関事務管理人届出書(C-7500)による届出書に添えて提出することで足る。
届出が受理されてから2週間ほどで登録が完了するというのが通例と思われる。
なお、非居住者である申告者については、登録担当部門から輸出入者符号担当部門に情報が引き継がれ、付番され、税関事務管理人に通知されるのが通例である。
2、通関業者選任手続き
当社作成の英文併記委任状で足る。依頼者が自らの委任状としたいする場合は管理部に内容確認をされたい。
3、納税事務管理人選任手続き
当該手続きについては不知のため割愛する。
なお、納税管理人については国税通則法第117条に規定されており、保税地域からの外国貨物引取に係る税務手続きを除く、国税について管理する者であり、非居住者が輸入通関済みの内国貨物を転売する際の消費税手続き、輸出貨物に係る消費税戻し税手続き等を管理する者である。
 
Bについて
1、「現実支払価格」拠れないことが想定される理由
(1)関税定率法第4条本文は課税価格決定の原則としており、雑駁にいえば、日本に所在する買手から売手に支払われた貨物代金を課税標準としている。
従って、非居住者が売買によらず便宜移転価格で社内処理をしている場合移転価格は現実支払価格として認められない。
(2)非居住者が自らを買手として第三者である売手から現実支払価格を支払って当該輸入貨物を購入した場合であっても、買手である非居住者が日本に所在しないため、課税課価格決定の原則を充足せず、当該仕入価格は課税標準として認められない。
 
2、課税価格決定の原則が認められない場合の課税価格決定方式
関税定率法は第4条の原則が適用できない場合、順次「同種類似」、「原価積算」或いは「再販価格からの減算方式」、更に「その他合理的な方法」を用いて課税価格を決定すると規定」している。
以上にあって、税関当局は検証の観点から「再販価格からの減算方式」を受け入れやすい決定方式としていると窺える。
この場合の再販価格とは、実際の再販価格を言い、販売予定価格等見込み価格は認めないと言うのが昨今の税関の姿勢である。
「再販価格からの減算方式」では、再販価格から、輸入時に関税・消費税、貨物の日本到着後の通関料金等を含む物流費用、販売管理費、適正利益等を原産した価格を課税価格とするものである。この算定にあたって申告納税者納税者たる非居住者は疎明資料を提示して説明を求められ、これがいわゆる“関税評価”或いは隠語として“ネゴ”と言われる部分である。この”ネゴ“においては、関税関係法令知識はもとより、法人税・消費税等国税関係知識、インコタームスの知識を必要とし、いわゆる”コンサル“が介在する場合がある。
 
3、価格未決定による許可前引取の場合の留意点
前述「2」のとおり、”ネゴ“には取引関係資料提出と内容説明、交渉が伴うため数か月の時間を要する場合がある。このような場合、「価格未決定による許可前引取」という制度の利用はかのうであるが次の点に留意しておくことが必要である。
(1) 価格未決定とは言え、輸入納税申告は行うので妥当な貨物価格を算出する必要があり、この暫定価格算出根拠を明確にしておかなければならない。
(2) 前記(1)の暫定価格が容認された場合、この価格に基づき納税額が算出される。許可前引取であるから納税は行わないが、申告者納税者である非居住者は納税額に安全率として1乃至2割を上乗せした納税額相当額をカバーする担保を税関に差し出さなければならない。担保は一般に銀行等金融機関の保証書によるため、非居住者がこれを入手できるか否かが許可前引取の制度を利用できるか否かを決めることになる。
 
Cについて、
関税法は“税関事務管理人の選任”を要件として非居住者を輸出申告者・輸入申告(納税)者として認めているが、外国為替及び外国貿易法外為法)輸出・輸入貿易管理令、薬事法(改正後名称は長いので旧法名食品衛生法等々は、条文上明確に非居住者を排除はしていないものの、輸出入者は当然居住者に限られるとの解釈をとっているようであり、公式見解は得ていないが、各法令による輸出入許可・承認の申請者は居住者でなければならないと思われる。
従って、非居住者が他法令該当貨物を輸出入する場合、積み出し又は国内引取が行えるか不確実であるということを認識しておく必要がある。