(巻十八)どぶ浚ふ河より低き四ツ木町(平河内群寿)

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4月17日火曜日

今日は団地の給水タンクとトイレ用水タンクの清掃が行われる。上水は9時から3時まで断水し、トイレ用水も止まる。
水を汲み置いておけば用は足せるのだろうが、不安を抱えながら家にいるよりは何処かトイレのきれいなところへ出掛けようよ?と細君が云うので、今日はお休みを頂いてトイレの綺麗なところに出掛けることにした。

すす逃げやなんだ神田の神保町(有馬朗人)

何処にするかとなると、出掛けたついでに通帳の記帳をしたいから千葉銀のATMのあるところになる。加えて京葉銀行と三菱が揃っているとなると、松戸が最寄の町となるのである。
そう言うわけで松戸と云う極めて地味な町で一日過ごすことになった。

言の葉の海に乗り出し糸垂れて当りの来ざる一日過ごせい(中村且之助)

この地味な水戸街道沿いの昔の宿場町はバブルの頃までは常磐線沿線の郊外住宅地として発展したが、今は勢いを失ってしまった町である。
同じ常磐線の柏にある“そごう”デパートが二年近く前に閉店したが、この町の伊勢丹デパートもこの3月21日に閉店した。

閉店の貼紙三行走り梅雨(川崎益太郎)

そんな松戸に戸定邸(とじょうてい)と云う和洋折衷庭園がある。この庭園は幕末のころパリ博覧会へ日本使節団の代表として派遣された水戸徳川家徳川昭武が隠居場として造った屋敷と庭園である。

でで虫や一度は巴里の灯を見たし(佐藤幸子)

通帳打ち込みのあと、駅から徒歩10分ほどのところにあるその庭園を散歩してみた。
戸定邸の屋敷は庭の見渡せる広い畳部屋があるだけで美術・工芸・文化の点ではまあ大したことはない。
戸定歴史館と云う展示館もあるが、昭武公の渡仏日記など好事家には垂涎であろうが、概ね展示物は大したことはない。大したことない屋敷と大したことのない歴史館をセットにした入館料金は240円である。120円づつであるから騙されたとも思わないし、施設側も身の丈を承知されているということでしょう。

身の丈の暮し守りて冷麦茶(北川孝子)

庭園自体もそれほどは広くないが、季節の木々花々を見つけて楽しむことはできる。 藤が盛りとのことであったが、藤棚ではなく鉢植えの藤が並べてあった。 草木を楽しむ散策だけなら入園料はいらない。

其人の名もありさうな春野哉(正岡子規)

歴史館で目的の一つであるトイレを使わさせていただいたが、清潔快適でございました。

時鳥厠半ばに出かねたり(夏目漱石)

ゆっくり座って写生をするなら弁当持ちで一日過ごしてもよろしいが、散策であればゆっくりと廻っても小一時間しかもたない小庭園である。ちょうど早昼飯によい時刻になったので松戸駅に引き返した。

遠つ世へゆきたし睡し藤の昼(中村苑子)