(巻十八)隣席を一切無視し毛糸編む(右城暮石)

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5月11日金曜日

昨晩の酒の飲み方を表現すれば“蛮勇的飲酒”がよろしかろう。
生ビールから入ったところまでは定石通りであった。
私はここからいつもの焼酎黒ホッピーへと舵を切った。あとの二人も白と黒のホッピーに切り換えた。残りの一人はシークワーサー割りで穏やかに第二次ラウンドとなった。
ホッピーとはウイスキーのコーラ割りをしたときのコーラにあたる希釈飲料でビールに似たような風味のある発泡性ノン・アルコール飲料である。
ホッピーの瓶は1本は300mlくらいである。飲み屋でホッピーを注文すると、30mlくらいの焼酎と氷を入れたジョッキとホッピーの瓶が出てくる。飲み手は自分の好みでホッピーを注ぎ足して酒の強さ(希釈度)を調節する。普通ホッピーだけを飲む人はいない。
普段、私はホッピーを半分ほど注ぎ足して呑んでいる。そしてジョッキを飲み干すと、「中、お願い!」と焼酎だけを注文する。そうすると30mlの焼酎と氷の入った
新たなジョッキが出てくる。(店によっては呑んでいたジョッキを使い回す。)
この二杯目のジョッキに半分残っているホッピーを注ぎ二杯を飲むのである。
日によっては三杯呑みたいこともある。このようなときはホッピーの注入量を下げて希釈度を上げて飲むのが呑兵衛常人の為すところである。
呑兵衛は意地汚いので、ホッピーを二本頼んで、半分残したまま店を去るなどという資源の無駄はしない。
希釈度で云えば20%から33%あたりがホッピー割りの呑みごろと云えよう。

では、なぜ昨晩は大変なことになり、沈没者が出たのかを実況報告のスタイルで解明してみたい。
5時から呑み始めて6時くらいまでは二時間で終わるというテンポであったが、通常の飲み方との相違点はお役所との一戦を乗り切ったという高揚感のためか、つまみを頼み過ぎているキライが認められた。
このあたりで四人全員がホッピーになり、中のお代わり外(つまりホッピー)のお代わり、つまみの追加と云う乱行スパイラルに嵌まって行ったのである。
つまみにする話題も“ここだけの話”、“今だから話す話”、“実はの実話”と刺激のエスカレート軌道に乗っていた。
しかし、最大の原因はこの夜の店の中(つまり焼酎)の販売方法の“いい加減さ”にあったのである。
前述の通り、中は30ml程度を容器で量り、ジョッキに入れるのが常道である。
ところが、この店ではジョッキの上げ下げが面倒くさいと判断したようで、氷はペールに入れてテーブルに置き客に任せ、焼酎は瓶を持ってきて客のジョッキに注ぐという方式を採っていた。
そして、一回の中の注文で客がストップをかけるまで注いでくれるのである。つまり30mlに拘らず、50mlでも、ストップを掛けなければ100mlでも大判振舞いしてくれるのである。つまり、ここの焼酎は店員が往き来するに要する人件費よりも安い(コストパフォーマンスの高い)代物と云うわけだ。
コストパフォーマンスの罠に嵌まり、スパイラルとエスカレーションの混沌のなかで、親分などはジョッキ半分の焼酎を100mlのホッピーで割るという、つまり希釈率66%のホッピーを飲み続けると云う、大学体育会系の新入生歓迎コンパのような状態に立ち至っていたのである。
ガンガンと呑み、ギャンギャンと語り、逆算すると9時過ぎであろう、ナミナミと注がれたジョッキがひっくり返り(ナミナミと注がれたジョッキをひっくり返し)、一同“ちょっと呑み過ぎたか?”と一瞬冷静になる。が、直ぐに気を取り直して中と外を交互に注文し続けると云う蛮勇を発揮した。
そして10時まで飲んだ。レシートに10時ちょうどと打刻されているので間違いない。
私は、危険を感じたので、先にジョッキにホッピーを八分目まで注いで、そこに焼酎を足してもらい希釈度20%以下を確保するという沈着な判断で沈没は免れたが、今午後となり眠い。