(巻十九)柴又の落ち葉駆け込む荒物屋(清水二三子)

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7月14日土曜日

息子の背広をクリーニングに持って行くのが朝のお仕事でありました。帰り道に花屋さんの前を通りましたが、唐辛子ほか夏らしい花が店先に並んでおりました。買わずに写真だけ撮らせていただきました。
午前のお仕事はクリーニング屋さんへのお使いだけではございません。掃除洗濯を終えてお昼をいただき、細君がお昼寝に入ったので、こそこそと外出いたしました。
先ずは図書館へ行きコチコチする随筆を物色し『あと千回の晩飯-山田風太郎朝日新聞社刊』から「B級グルメ考」をコピーいたしました。いずれコチコチして覧に供します。
折角の自由時間なので“ときわ””まで足を運び昼酒を楽しむことにした。今日はアジフライで一杯いただいた。
店のテレビは『警視庁捜査一課長』というのを映していた。暇潰しに見ていたが、なかなか面白い。捜査一課長の部屋は知らないが、公安一課長の部屋はあんなに豪勢ではなかった。
ドラマは知的なトリックの解明と云うよりはお涙お情け先行の展開であり、“コロンボ”のような謎解きの妙味は全くない。お涙の主役の嫌疑者は無実で、伏線でちょっと触れておいた脇役が無理矢理結び付けられて犯人になるというのが二本見ての分析であります。

しぐるるや捜査本部の午前四時(富士原志奈)

そのようなテレビを見ながら昼酒をやっている御同輩が他に二人いらっしゃった。
隣のパナマを被った同年輩、そのひとつ先は五十代の男である。
“ときわ”の親爺が隣り爺に仕事に行けなくなるから夜九時過ぎは呑むなとか色々説教のうえ、今日はこれ以上酒を売らないと諌めている。
この呑兵衛さんは三十年来の“ときわ”の客だそうだ。
親爺が説教しながら問わず語りに語るには、
呑兵衛さんは北海道の出身で四十数年有名企業にお勤めされて、数千万の退職金を頂いて余生に入ったそうだ。現役の頃は真面目で毎日黒い鞄を提げてのご通勤だったそうであります。
それが、退職金を頂いて数年でそれを使い果たし、今は工事現場の交通整理警備のお仕事だそうです。そのお仕事もお酒でしくじるらしく、それで親爺が 呑兵衛さんを強く諌めているらしい。
この話を聞いていた五十代が“すげえ!俺には出来ねえ!”と声をあげ、私も“ただ者じゃない!”と敬意を表しました。
呑兵衛さん温厚な方で、“そうなんだよね、そういうことになっちゃったのよ。”と悔いとかをまったくにじませずに応じ、淡々と杯を口に運んでいた。
“こんだけ飲んでも体はどこも悪くないんだ。もっとも強度の依存症だと言われているけどね。”

人生色々だが、真似を出来ない生き方だ。

熱燗や酒が貴君を駄目にする(藤嶋務)

どさくさ紛れに愚痴を一つ。事故と不祥事の区別がつかない馬鹿者がいるので嫌になる。
しかし、こんな愚痴をこぼしているようでは 呑兵衛さんの境地には毛頭なれない。

長き夜をたたる将棋の一ト手哉(幸田露伴)