2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

(巻三十九)性別の欄に「その他」や西鶴忌(加藤津恵子)

12月31日日曜日 (巻三十九)性別の欄に「その他」や西鶴忌(加藤津恵子) 相当悪い予報にもかかわらず、曇りのち晴れ。 朝家事は正月の支度手伝い。里芋を剥き、蓮を切り、下茹でを番し、炊き合わせの番をし、人参と大根をマッチ棒状に刻み紅白膾を調製致す。 …

「熊野路-新日本名所案内 - 三島由紀夫」岩波文庫 三島由紀夫紀行文集 

「熊野路-新日本名所案内 - 三島由紀夫」岩波文庫 三島由紀夫紀行文集 南紀は陽光のあふれている感じの地方で(実際は雨量がすこぶる多いのだが)、夏のさかりにここを訪れたのはよかった。私が今まで紀州へ行ったことがないのは、われながらふしぎだ。少年時…

(巻三十九)一生をつまんで語る夜長かな(塙ひさ)

12月30日土曜日 (巻三十九)一生をつまんで語る夜長かな(塙ひさ) 曇り晴れ。朝家事は特になし。細君は生協に出かけた。私も買い残しを買いに出かけ、往きに団地の野良“トイちゃん”にスナックをふるまう。復りに通りかかると猫姐さんが食事を与えていた。…

「芭蕉の一生 - 島崎藤村」岩波文庫 藤村随筆集 から

「芭蕉の一生 - 島崎藤村」岩波文庫 藤村随筆集 から 「巌の処女」の中で、ダヌンチオは生活の様式の創造を説いている。生活を芸術とするの努力を説いている。ダヌンチオの想像を実現したに近い人を求めるならば-化令[たとえ]その性質においては近代の人と…

(巻三十九)独り居の二軒並びのそぞろ寒む(西村泉)

12月29日金曜日 (巻三十九)独り居の二軒並びのそぞろ寒む(西村泉) 晴れ。朝っぱらから牛乳の拡販員がお見えになった。もちろんドアなど開けはしない。しかし逆恨みも避けたいのでパンフは新聞受けに入れて置いて下さいとインターホン応対した。サンプルをド…

「三人の訪問者 - 島崎藤村」岩波文庫 藤村随筆集 から

「三人の訪問者 - 島崎藤村」岩波文庫 藤村随筆集 から 「冬」が訪ねて来た。私が待受けていたのは正直に言うと、もっと光沢[つや]のない、単調な、眠そうな、貧しそうに震えた、醜く皺枯[しわが]れた老婆であった。私は自分の側に来たものの顔をつくづく…

(巻三十九)嫁がぬと葡萄の種を庭に吐く(松村正之)

12月28日木曜日 (巻三十九)嫁がぬと葡萄の種を庭に吐く(松村正之) 曇りのち晴れ。朝家事はなし。細君は今日から9時開店になった生協へ出かけて、正月の食材などを仕入れ、花も買って帰る。 昼飯喰って、一息入れて、街の様子を見に行く。駅前に正月飾りの露…

「小諸のおもいで - 島崎藤村」岩波文庫 藤村随筆集 から

「小諸のおもいで - 島崎藤村」岩波文庫 藤村随筆集 から 浅間の麓では、あの石ころの多い土地にふさわしい野菜がとれる。その一つに、土地の人たちが地大根と呼んでいるのがある。練馬の大根なぞを見た眼には、ずっと形もちいさく、色もそれほど白くなく、…

(巻三十九)晩秋や斜めに帰る運動場(野副豊)

12月27日水曜日 (巻三十九)晩秋や斜めに帰る運動場(野副豊) 晴れ。朝家事は洗濯と掃き掃除。 角川俳句十二月号を捲り、 又一つ越えぬ此世の年の果(古山丈司) 他言即斬首の掟茸採(三村純也) 浅草や夜長の町の古着店(永井荷風) 気がのらぬ糸瓜を育て小学生(岡…

「毒キノコ - 渡辺隆二」山里に描き暮らす から

「毒キノコ - 渡辺隆二」山里に描き暮らす から 平成二十二(二〇一〇)年の夏は暑かった。都心の真夏日は七十一日になり、観測史上最多であった。言うまでもない、人は健忘症である。喉元過ぎれば熱さ忘れる?真夏日がつづいていた頃、「八ヶ岳の麓にいる君が…

(巻三十九)逆風といふ春風だってあるだろう(渡辺まさる)

12月26日火曜日 (巻三十九)逆風といふ春風だってあるだろう(渡辺まさる) 快晴。朝家事はなし。 暇潰しに顔本に、 《昨日はブログ「随筆筆写」に27人の方が訪れ、37の筆写にアクセスがあった。アクセスのトップは 「偶然 ー 里見弴」朝夕 感想・随筆集 講談社文…

「一貫性のない生活 - 土屋賢二」純粋ツチヤ批判 から

「一貫性のない生活 - 土屋賢二」純粋ツチヤ批判 から わたしの行動には一貫性がない。若いころ、一人の哲学者を理解するのにほぼ十年費やした(その結果、その人の哲学は納得がいかないことが分かった)。四十歳を過ぎてピアノを始めたときは、曲がりなりにも…

(巻三十九)小刻みに踊る湯豆腐一人酒(藤井瑠里美)

12月25日月曜日 (巻三十九)小刻みに踊る湯豆腐一人酒(藤井瑠里美) 快晴。朝家事は洗濯、台所換気扇のフィルター交換、掃き掃除、布団干し。 彼奴が喉が痛いとうるさい。医者に行くつもりらしいが、その前にコロナの試薬でコロナではないとの身の証しをしたい…

「生命のキーワード 動的平衡 - 福岡伸一」ちくま科学評論選 から

「生命のキーワード 動的平衡 - 福岡伸一」ちくま科学評論選 から 生命は、絶え間なく少しずつ入れ替わりながら、しかし全体としては統一を保っている。シェーンハイマーは、これが「生きている」ことの最も大切な側面だ、と考えた。彼の言葉によれば、生命と…

(巻三十九)アイデアの浮かんでは消え明易し(持永真理子)

12月24日日曜日 (巻三十九)アイデアの浮かんでは消え明易し(持永真理子) 曇り。家事はなし。 俳壇が届き、以下を書き留めた。 生き方を師走の街に見られけり(北村純一) 簡単に見えてなかなか冬構(山下しげ人) 夢のあと厠へいそぐ寒きびし(小谷恒夫) 昼飯喰っ…

「フランス座にいた、或る男 - 玉袋筋太郎」キッドのもと から

「フランス座にいた、或る男 - 玉袋筋太郎」キッドのもと から オレは高校を卒業してすぐビートたけしの弟子になったわけだけど、弟子っていっても、別に何か芸ができるわけじゃなかった。実際、そのころやってた仕事は、当時の人気番組『風雲!たけし城』で…

(巻三十九)一病は一病として年酒酌む(島谷征良)

12月23日土曜日 (巻三十九)一病は一病として年酒酌む(島谷征良) 快晴。朝方やや冷え込む。やや冷え込むがまだ窓際の席に座ってコチコチできるほどの冷え込みであり、寒中の寒さではない。 朝家事は洗濯、掃除機がけ、買い物。 昼飯喰って、一息入れて、散歩…

(巻三十九)働けば見失ふもの去年今年(稲畑汀子)

12月22日金曜日 (巻三十九)働けば見失ふもの去年今年(稲畑汀子) 快晴。朝家事は特になし。義妹が土産品の黒酢を届けにきてくれた。 昼飯喰って、一息入れて、散歩に出かけた。昨晩、寝床の中で、ふと寿司が食べたくなった。とて、寿司屋でつまむほどの意気込…

「フランス留学 - 水道橋博士」キッドのもと から

「フランス留学 - 水道橋博士」キッドのもと から 芸人としての揺籃期[ようらんき]、ボクたちは「浅草キッド」という芸名そのままに、浅草で修業時代を過ごした。いや、正確には、浅草で漂流していた。ボクたちが住み込みで修業していた浅草フランス座はヌ…

(巻三十九)わが命先が見え来し去年今年(稲畑汀子)

12月21日木曜日 (巻三十九)わが命先が見え来し去年今年(稲畑汀子) 快晴。朝家事は洗濯、ベランダ掃除、掃き掃除、買い物。 団地の野良のトイちゃんにたかられて買い物の往復で一袋ずつ献上いたす。餌付けは契約違反だと貼り紙が出ているが、心優しい人は案外…

(巻三十九)大根のおでんが好きで国憂ふ(堀切克洋)

12月20日水曜日 (巻三十九)大根のおでんが好きで国憂ふ(堀切克洋) 晴れ。朝家事はなし。細君は記帳に出かけて魚、肉などを買って無事帰宅。やはり駅下のビーンズの八百屋、魚屋の方がよい品が揃っているとの由。年用意はやっぱりバスに乗って駅前まで来よう…

警句金言集

警句金言集 To heal a wound, you need to stop touching it.For peace: I delete, I block, I leave, I ignore.You only live once, but if you do it right, once is enough. Mae WestWhen you choose peace it comes with a lot of goodbyes.Observation …

「踊り場の光景 化粧・衣装 - 佐々木幹郎」大正=歴史の踊り場とは何か から

「踊り場の光景 化粧・衣装 - 佐々木幹郎」大正=歴史の踊り場とは何か から 化粧品が産業として成立したのは明治三〇年代の後半であったと言われている。それまで化粧品は、小間物の付属品として扱われていた(『資生堂宣伝史』Ⅰ)。化粧において女性の個性は…

(巻三十九)石組のかなめの小石淑気かな(渡井恵子)

12月19日火曜日 (巻三十九)石組のかなめの小石淑気かな(渡井恵子) 曇りのち晴れ。朝家事は洗濯と掃き掃除。 昼飯喰って、一息入れて、散歩。昨日買った年賀葉書の一枚は群馬に住む高校同級の小泉に出す。この3年、父、母、兄と続けざまのご不幸で控えていた…

(巻三十九)引潮の真砂のひしと年明くる(布施伊夜子)

12月18日月曜日 (巻三十九)引潮の真砂のひしと年明くる(布施伊夜子) 晴れ。だいぶ気温が下がってきたようで4度だったとか。顔本でフォローしている那珂湊駅の猫のところはマイナス2度まで下がったとか。我が部屋の窓際はまだ座って居られるほどの寒さだが、…

「人生居候心得 - 種村季弘」筑摩書房 人生居候日記 から

「人生居候心得 - 種村季弘」筑摩書房 人生居候日記 から数年前のことになるが、勤め先の大学に、ある日ひとりの婦人が来訪された。婦人は渡辺隆次さんからといって、ジャムの壜のような広口壜わおいていかれた。濃紫色の、なんだか血液の混じっていそうな液…

(巻三十九)恐ろしきことをさらりと手鞠唄(加藤耕子)

12月17日日曜日 (巻三十九)恐ろしきことをさらりと手鞠唄(加藤耕子) 晴れ。朝家事は洗濯、掃除機がけ、ベランダの溝掃除。 落ち着いたところで年賀葉書を書いた。印刷済みの葉書を買い求めておいたが、それでも余白があり埋めねばならず『日々静かに過ごして…

「いずれの山が天に近き(抜書) - 池澤夏樹」新潮文庫 母なる自然のおっぱい から

「いずれの山が天に近き(抜書) - 池澤夏樹」新潮文庫 母なる自然のおっぱい から富士山が日本一の山であるということはいつごろから世間に知れわたっていたか。本当はこの日本一という言葉の意味を厳密にしたいのだが、それはもう少し先に延ばして、ともかく…

(巻三十九)聞き流すことも介護や豆の花(増田都美子)

12月16日土曜日 (巻三十九)聞き流すことも介護や豆の花(増田都美子) 曇りのち晴れ。朝家事はなし。生協で少々買い物。昼飯喰って、一息入れて、散歩。路地の庭木に柑橘類がたわわ。 別に酒が飲みたいと云うのではなかったが、要は小銭が遣いたいという実によ…

「風景(抜書) - 池澤夏樹」新潮文庫 母なる自然のおっぱい から

「風景(抜書) - 池澤夏樹」新潮文庫 母なる自然のおっぱい から 風景というのは常にある特定の場所からの眺めだ。世界と人との関係において、人はいつもどこかある場所にいる。世界の方は見える範囲の外側まで広がっているが、人の方は必ず「ここ」にいる。だ…