(巻四十)読むことに尽きる生涯春の雨(岡田泰)

4月26日金曜日

 

(巻四十)読むことに尽きる生涯春の雨(岡田泰)

 

晴れ。朝家事は特になし。生協へ行く。帰りに保育園のお散歩に会う。ガキどもより保育士のおねえさんたちが可愛い!

昼飯喰って、一息入れて、歯科へ参る。

AVばかり観ているので街を歩いている薄着のちょっとしたのを見ると女優さんを連想する。ことに歯科衛生士さんの背が高くてありそうな方には想像が膨らむ。

嘘つけぬほどぴつたりと白スエーター(清水衣子)

ではありましたが、ご担当の衛生士さんはAVタイプではない方でした。先生が抜歯跡の回復状態を確認し、二週間後辺りに仮歯の型どりだそうだ。本日は120円。他に口内消毒薬710円を買うことになった。

歯医者のあとはパターン化した「カメスタ」飲みと致した。今日はお目当てのポテサラがあり、美味しくいただき、追加でピザを頂き、都合2杯飲んだ。お勘定は1280円也。

裏道を通って帰宅。

願い事-ポックリ御陀仏。知らずに仏。

 

昨日はブログ「随筆筆写」に38人の方が訪れ、44のアクセスがあった。アクセスのトップ(アクセス6)は

「東京-大阪、深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと - スズキナオ」

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/32451963/

2位(アクセス3)は

「卒業生へのはなむけの言葉ー中島義道新潮文庫“私の嫌いな10の人びと”から

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/32294439/

サザエさんの性生活 - 寺山修司」角川文庫 家出のすすめ から

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/32296453/

「詐欺幇助罪の成立が認められた事例 - 同志社大学教授十河太朗」法学教室2023年5月号から

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/33283559/

「ラビリンスの残る濹東の町-玉ノ井、鐘ヶ淵(墨田区) - 川本三郎ちくま文庫 私の東京町歩き から

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6位(アクセス2)は

荷風先生寸感 - 和田芳恵講談社文芸文庫 順番が来るまで から
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秘すれば花 - ジェーン・スー」中公文庫 これでもいいのだ から

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で、花伝書絡みで、

世阿弥の《風姿花伝》について ー 立原正秋」角川文庫 男の美学 から
https://zuihitsuhissha.exblog.jp/32298852/

を紐づけ致しました。

 

俳人は歩き画人は座る春(内山思考)

(巻四十)無駄な日をむしろ愛して蜆汁(大牧広)

4月25日木曜日

 

(巻四十)無駄な日をむしろ愛して蜆汁(大牧広)

 

曇り。電気屋に電話機を買いに行く予定だったが、細君が腹をこわし取り止めとなる。そう云えば最初のデートの帰りから腹をこわしていた。

朝家事は特になし。夜濯ぎの洗濯物を干し、毛布を干す。

昨日失敗した岩淵水門に再挑戦した。昨日よりはましなので顔本に投稿した。

昼飯喰って、一息入れて、散歩。図書館で返却し、コンちゃんを訪ねた。久し振りだと愛想がよい。ゴロゴロ転がって鳴き声のサービスまでついた。お稲荷さんには私のポックリと細君のシャッキリをお願いした。二人分頼んだが御賽銭は十円で変わらず。7ELEVENで珈琲にしようかと思ったが、今日は野点日和なので通過。クロちゃんに一週間ぶりに対面。クロちゃんもなぜかとても親密にすり寄ってくれた。

で、生協に入りつまみを物色し寿司が3割引きになっていたのでそれにして、ロング缶を篭に入れた。

いつものフーコの公園でテーブルに荷物を置いたらすぐにフーコが駆け付けてきた。呑み支度を済ませて、寿司の中から蒸しエビを皿に載せてやった。躊躇しているのでスナックも載せてやったら食べ始めた。次に炙り鮭、鮭とあげたが、どちらかと云えば私のあまり好きではないネタである。誰かと酌んだ方が愉しいが、無口な猫が最適だ。旨かったとみえてフーコは皿まで舐めていた。で、ゴミ集積所に寄って帰宅。

蒸し野菜を作り、豚肉を焼く。洗濯物を取り込む。

願い事-ポックリ御陀仏。知らずに仏。

夕方、座椅子でウトウトして目覚めたら、西暦何年、令和何年だったかがスッと浮かばずうろたえた。

老いていま霞の中に消えかけて(北島季情)

 

昨日はブログ「随筆筆写」に35人の方が訪れ、40のアクセスがあった。アクセスのトップ(アクセス6)は

「東京-大阪、深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと - スズキナオ」

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2位(アクセス4)は

「富士に就いて - 太宰治」作家の山旅 から

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セントルイス・カレーライス・ブルース - 井上ひさしちくま文庫 カレーライス大盛り から

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「刑法演習-大麻密輸事件-CDと未遂・既遂について - 名古屋大学齊藤彰子教授」法学教室10月号

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刑法「不法領得の意思の肯否 - 中央大学教授 高橋直哉」法学教室2022年10月号

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「科学の原理 - 山本貴光吉川浩満」高校生のための科学評論エッセンス ちくま科学評論選

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「単純系vs複雑系 - 池内了」高校生のための科学評論エッセンス ちくま科学評論選

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「天空の城、ギンザ - 朝井リョウ集英社文庫発注いただきました!から

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で、「富士に就いて - 太宰治」に絡めて、

「富士見坂 - 横関英一」中公文庫 江戸の坂東京の坂 から

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/32304654/

を紐づけ致しました。

 

 

「三年周期 - 団鬼六」快楽なくして何が人生 から

 

 

「三年周期 - 団鬼六」快楽なくして何が人生 から

 

港町の酒場
教頭は、五十四、五歳ぐらい、酒好きでなかなか話のわかる好人物でした。
ある夜、この酒好きの教頭に連れられて、私は港町の酒場へ入ったことがあります。教頭に連れて行かれた店は、酒場街の中でも最も大衆的な店で、かなり繁盛していました。縄のれんを吊るすような店なのに、ドレス姿のいかにも酒場女らしいホステスたちが相当に酔っ払って客の席を渡り歩いています。
ママは黄色いドレスがよく似合う瓜実顔の背の高い女でした。
彼女は教頭を見ると、「ワアァ、先生、大好き」といっていきなり彼に抱きつき、頬っぺたにチュッ、チュッとキスするんです。
「このママはね、当校のある生徒の父親の愛人なんだよ」
と、教頭はそんなふうに酒場のママを私に紹介するのです。
教頭が当校の生徒の父親の愛人と、こんなふうに酒場でチュッ、チュッやっていいものかと私は何とも気になるんですが、しかし、こういう港町の酒場は東京の酒場では見られない一種独特の面白さがありました。
帳場の方に向かって、ホステスたちは、客の注文を追加するたびに、
「さんまさんにビール二本、追加」
「いわしさんにお銚子一本、追加」
などと、がらがら声を張り上げているのですが、さんまさんとか、いわしさんとかいうのはサンマ船やイワシ船に乗っている客のことなんです。ときどき、
「あそこのコンブにわかめ酒」
などとホステスがおかしな注文をするのでびっくりさせられることがありますが、コンブ採りの漁師がワカメのお通しつきの酒を注文しているということらしいんです。
ママは壁際の席で不景気そうにボソボソ語りながら、酒を飲んでいる客をチラッと見ると、忙しげに立ち働いているホステスに向かって声をかけました。
「あそこのイカにお銚子を追加しなよ。お通しはスルメでいいわよ」
そして、ママは私の顔を見てキャッキャッと笑いながら立ち上がり、他の客の相手をするため、よろめきながら混雑の中へ入って行くのです。
「面白い店ですね。ちょっと東京じゃこういう雰囲気を味わうことはできませんよ」
と、私は教頭のコップにビールを注ぎながらいいました。この酒場《黒船》には酒場女六人ぐらいを置いているのですが、教頭のいい方によると彼女たちは航海第二未亡人であって、つまり、遠洋漁業に出かける海の男たちの愛人であるというわけです。単に航海未亡人というのは二年、三年空閨を守らねばならぬ海の男たちの本妻を指すものらしく、だから、愛人は第二未亡人という呼称がついたのでしょう。
教頭はいつの間にか、その酒場《黒船》内の航海第二未亡人たちに取り囲まれてご機嫌になり、私に向かって、
「よし、明後日の海南丸の出港を見送りに行こう。日曜だからちょうどいいじゃないか」
といい出すのです。
そして、教頭は酔って大声で歌いまくっているママを呼び寄せ、この新人教師の私もその見送りバスに乗せてくれ、と、わざわざ頼んでくれるのです。ママはこの港町酒場で働く航海第二未亡人のボスでもあるそうです。

 

出港の見送り
それから二日後、私はその酔っ払いの酒場ママに招待された形で、奇妙な貸し切りバスに乗りました。
バスの中は港の酒場女でぎっしり詰まっています。そして、それぞれ化粧をし、綺麗に着飾って、揃って神妙な顔をしていました。酔っている女など一人もいません。
彼女たちはこれから二年間の航海に出る海南丸を見送りに出かけるわけで、海南丸には彼女たちのいわば情夫が乗っているわけです。バスは酒場女たちを満載して走り出しましたが、船の出る桟橋には止まらないんです。桟橋は船員たちが家族と別れを惜しむ場所なのです。バスは桟橋からかなり離れた所に一旦停止して船の出港を待っています。
バスの中の彼女たちはいっせいに車窓へ顔を押しつけるようにして桟橋の方を見つめ、息をつめて、妻や子と別れを惜しんでいる愛人の姿を必死に探し求めているのです。
「ね、私の彼はあれよ、私の彼はあれよ」
突然、ママが私の首筋をつかむようにしてうしろから昂奮した声を張り上げました。
ママの情夫は海南丸の一等機関士であることがわかったのですが、小さな子供を肩車して妻と静かに談笑しているようで、ママはその光景を眼にしながらしきりにハンカチで目頭を押さえていました。
いた、いた、あそこにいた、など酒場女たちは自分の愛人を見つけると、昂った声を上げて子供のように悦び、また、涙を流したり、バスの方向に愛人や愛人の妻の視線が向けられると見つかるはずないのに車窓にくっつけている首を低めたりするのです。
こんな形でしか愛人を見送ることができない彼女たちを見ているうちに、私は妙に胸が熱くなってくるんです。海南丸に乗り込んだ船員たちは、家族の者たちとテープを投げ合って手と手をつなぎ合うのです。
やがてそのテープを切り離して海南丸が出港すると、それっとばかりに酒場女たちを満載した貸し切りバスは走り出しました。バスは港町を通り抜けて大橋を通過し、城ヶ島から海上を航行して行く海南丸を、彼女たちは見送るつもりらしいのです。
自分たちが何の気がねもなく見送ることのできる場所にまでバスを走らせているのです。ほっかり浮かんだ白い雲と青い海、のんびりと航行する遊覧船からガイド嬢の歌声がマイクを通してバスの中まで聞こえてきます。
♪雨は降る降る 城ヶ島の磯に 利休ねずみの雨が降る♪
島の南端に到着したバスから酒場女たちはいっせいに下り立つのです。そして、岸壁の方に向かって彼女たちは子供のようにわっと駆け出して行きます。
遥か彼方の洋上を海南丸が航行して行くのですが、船上でも彼女たちの姿が現れるのを待ちかねていたのでしょう。青い海の沖合に浮かぶ海南丸からは、もうこっちに向かって布のついた長い竿が何本も揺れ動いてるんです。何やら、大声でこちらに向かって船員たちはわめき散らしているのです。
俺が戻るまで浮気したら承知せんぞ、とがなり立てているのかも知れません。長い布をつけた旗は大きく、懸命に揺れ動いている感じでした。それは先ほど、彼らが港の桟橋で妻子と別れを惜しんだときのような静的なものではなく、いかにも海の男の別れ方といったような豪快さに満ちたものでした。情熱を込めた別れの合図なんです。
「あんたぁ、好きだよう」
「外国女と浮気するんじゃないよっ」
地中海方面まで航海する海南丸に向かって、酒場女たちは必死にハンカチを振ります。
号泣する女もいれば、大声で笑って見せる女もいました。その一種異様な、そして、何とも情熱的な別れの光景を見られて私の胸は痺れました。
芸術的な別れ方を見せられたような感動を受け、こんなのに比べると、都落ちするときの私と女の別れ方は何だか陰気くさくて恥ずかしいような気がしてくるのです。
港町の酒場女と海の男の別れ方は、それほど私を感動させ、いまでも別れた東京の女を思い出しては、くよくよ思い悩む自分が小さく、情けないものに思われてくるのです。
教頭は私に、同じ学校の英語教師である土地の女性を結婚相手として薦めてくれたのですが、私は東京のいろいろな女にまだ未練があって、そんな気持ちにはとてもなれなかったのですが、この海の街、三崎の女に何となくロマンチックな魅力を感じ出すようになってきたのです。

 

三崎の女と結婚
校長からの熱心な薦めもあって、私は三浦三崎で結婚することになりました。相手は同じ学校の英語の女教師です。丁度、私が三崎へ流れついてから一年目、東京に復帰できる望みも次第に薄れて、私はもう田舎教師になって、このまま老い果てていこうと半ば決心した頃でした。
田舎教師の生活も満ざら捨てたものではないと私は思うようになっていました。とにかく、風光明媚な海のある街で、空気は清々しいし、魚は新鮮でうまい。私の住んでいるところから学校に至るまでのコースは紺青の海が続き、陽炎の燃えるのどかな砂山が続くのです。浜辺に引き上げられた漁船が見え、乾かした海草の匂いや、魚の匂いが流れてきます。
このように、少し恰好よくいえば、初期の印象派の絵のような美しい風景に溶け込んで暮らせるなど、実に幸せではないか、と、私は思うことにしました。
私と結婚してくれる女性には悪いけれど、島流しにされた流人が島の娘と結婚するような淋しい落ち着きを持つべきだ、などと私はセンチメンタルに考えました。
しかし、配所暮らしのままで結婚というのは最初の計算にはまるでなかったことで、しかも相手が女ながら中学では英語部長の肩書きもある教育者なのですから私としては相当にビビりました。これまでの人生経験から見ても自分の妻になる女というのは初心[うぶ]なストリッパーか気立てのいい酒場女ぐらいしか対象として想像できなかったのですが、その種の女性に初心だとか気立てがいいとか注文をつけるのは変だとしても、まさか教育者を妻にするとは思わなかった。
ところがどういうわけか、常識では、昔、ストリップ小屋で働いたとか、盛り場で酒場を経営したとか、そんな経歴を持つ私なんぞに女教師連中は嫌悪感を持つはずだと思っていましたが、案外そうではなく、私は彼女たちにかなり受けはよかったんです。音楽と書道の独身の女の先生が、よく日曜日など連れ立って南下浦の私の侘び住居に遊びに来たものです。
私は東京の玄人筋にはあまりもてなかったようなんですが、田舎の女教師にはもてていたように思われます。
私は自分の前歴は包み隠さず、彼女たちに語っていたのですが、昔の師範教師みたいなタイプより、私のようにストリップ劇場出身の珍妙な教師の方が、彼女たちの興味を引くことになるらしいのです。
結婚式は城ヶ島ホテルで行いましたが、お祝いに集まったのは、ほとんどが地元の妻方の縁者と学校の教職員ばかり、私の方は両親と妹だけしか出席しませんでした。結婚の通知状を昔の仲間に出さなかったのです。うかつにそんなものを出すと、こちらの住所を嗅ぎつけた借金とりがお祝いに出席してくるかも知れず、それを恐れたからです。
もちろん結婚式の何ケ月か前に彼女をつれて東京へ出て両親に引き合わせましたが、父はあとから私だけを別室に呼んで、人生、すべて勝負事だぞ、悔いはないか、と結婚に賛成とも反対ともいわず、しかし、相場で失敗し、三崎へ逃げたことに関しては、男はそうでなくてはいかん。相場の損はいつか取り戻せるものだ、と、以前と性格に変化は見られないんです。妻の実家から相場の資金提供させよ、といい出しかねないので妻をなるべく父には接近させないようにしました。
こうして三崎で結婚してしまった私は今まで通り、平凡で単調な教員生活を続けようとしたのですが、変化が生じてきました。

 

花と蛇」の依頼
ある日、大阪から「奇譚クラブ」の社長の木村さんと「奇譚クラブ」で縄師として活躍されていた辻村という人が揃って私を訪ね、三崎にまでやって来て、引き続いて「花と蛇」を執筆してくれないかと私を口説き始めるのです。
どぎついSMエロ小説の社長と編集長二人が突然、中学にまで私を探しあてて来られたのですから面喰らいました。職員室で話すこともできないので校庭の鉄棒にぶら下がりながら話を聞いたのですが、以前、東京から奇譚クラブへ投稿していた「花と蛇」という異常エロ小説が好評で、こんなにファンレターがきていると木村さんは鞄の中からどっさり手紙を取り出して私に示し、引き続き連載を頼むといい、その場で多額の現金を私に渡そうとするのです。
花巻京太郎というペンネームで東京で酒場経営しているとき、自棄気味になって三回か四回連載したことがあり、東京から夜逃げするのと同時に中断したままになっていたのですが、続いて執筆を頼むといわれても私はまごつくばかりです。
花と蛇」の連載が始まってからかなり部数が伸びた、と私に感謝するようないい方をしたあと、木村さんは辻村さんと一緒にどうしても続けて執筆してほしいと粘るのです。といわれても、私は中学の教師になってしまった現在、ああいうものにまた手を染めるということは何か教師として背徳行為を行うようでうしろめたさを感じるのは当然で、とは一応、いってはみたものの、私は田舎教師の単調な日々に無感動ノイローゼというような状態になっていて、無性に自慰小説が書きたくなっていたことも事実でした。
とても小説みたいなものは書きたくないが、自分を自慰するためのエロ小説は書きたいという衝動もありました。
「書けといわれれば書けないことはないんですが、書く場所がないんです」
同じ中学に勤務する妻は文学少女みたいなところがあって、以前、私が何かの新人賞をとったような作品を読んで、それでまあ私を信用しているようなところがあり、その裏で私が「奇譚クラブ」向けのこんな悪魔小説を書いているなど夢にも知らないはずです。妻は机の上などに放置した私の生原稿を読む癖があるので油断も隙もないということを私は不景気な口調で木村さんにいったと思います。
しかし、東京でデカダン生活に浸っていた頃から「奇譚クラブ」の木村さんからは「花と蛇」の反響は凄いから続投してほしいという手紙連絡を何度も受けていたのですが、根気が続かず自然消滅した恰好になりました。それなのに木村さんはわざわざ大阪から原稿料など持って三浦三崎まで来てくれたという熱意を見れば、連載を復活させるのは当然だろうと密かに決心したのでした。
そう決心すると東京で「裏窓」というSM雑誌を発刊している美濃村さんも以前から、私の倒錯的官能小説を欲しがっていました。つまり彼は私の酒場時代のデカダン仲間の一人だったのです。
職員室でこっそり書いていると後ろから教員たちがいつの間にかのぞき込んでいて、郷土史の研究ですかとか、火野葦平の『花と龍』と何か関連のあることをお下記になっているのですか、と声をかけたりするのです。私は落ち着かないし、かといって自宅では妻の眼がこわいし、締切りに追われてついには教室の机で生徒に自習させてこのエロ小説を書いたこともありました。そして教室内でどぎついエロ小説を生徒に自習してもらって書くなど、救われない教師になったものだと情けなく感じたこともありました。
四クラス、すべて自習にして教室内の机で「裏窓」の長編書き下ろしを仕上げたこともありました。
「自習っ」というと生徒たちの方が喜ぶのです。書き終えると、クラスの中の劣等生に頼んで、近くの郵便局から出版社へ発送させたりしました。
教師時代に「花と蛇」を再開することになると、それまでの花巻京太郎のペンネームを団鬼六に変えたのですが、別にペンネームにこれという意味はありません。団令子という女優が好きで、下からいくと昭和六年生まれの私、これからは鬼みたいになって団令子みたいな女を犯しまくる、といったところになりますか。
絶対に自分は教師として失格だと間もなく学校を辞めることになるんですが、それからいろいろな職業にかかわりましたけれど、「奇譚クラブ」における「花と蛇」の連載は延々と続いて通算、八年に及ぶ大長編となったのです。
たしかに私は性的には嗜虐趣味だと思っていますが、持つ分子は極めて微量なものであって、いわゆるSM愛好者ではないんです。緊縛マニアというものでもない。妖艶なまたは清楚な美女が緊縛された裸体を羞恥に悶えさせているただそれだけの情景に濃厚なエロチシズムを感じてしまうのですから、たしかに異質な性癖だと思うのですが、これはSMといっても病的なものではなく極めて健康的な分野だと自分では思っています。
その羞恥という感情表現の語句を一つ一つ考え出すのも私の場合、自慰的な快感があるんです。羞恥、含羞、恥辱、屈辱、汚辱、廉恥、慚愧など-。また、哀感にしたって、悲哀、哀傷、悲痛、悲壮、哀絶、悽愴など-。官能シーンにおける感情表現の類語選びもまた、「花と蛇」における私の自慰的な楽しみ方でした。

(続く)

(巻四十)連休の旅寝の枕明易し(桑原たかよし)

 

 

4月24日水曜日

 

(巻四十)連休の旅寝の枕明易し(桑原たかよし)

 

雨。

二階より手を出してみる春の雨(溝渕弘志)

程度の春の雨。

朝家事は掃き掃除だけ。細君の長電話の間、座椅子でごろ寝。

昨晩のシチューの残りほかで昼飯喰って、一息入れて、またごろ寝。

鶏とブロッコリーの煮物、鰤焼きなど手伝う。

外に出たのは郵便受けまで。給与の振込通知が来ていた。今日も一銭も使わず。

願い事-ポックリ御陀仏。知らずに仏。

 

こときれてゐればよかりし春の夢(上田五千石)

 

昨日はブログ「随筆筆写」に63人の方が訪れ、80のアクセスがあった。アクセスのトップ(アクセス8)は

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「詐欺幇助罪の成立が認められた事例 - 同志社大学教授十河太朗」法学教室2023年5月号から

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3位(アクセス5)は

「かたちのレビュー(抜書:サントリーオールド、団地、蚊取り線香) - 鷲田清一」生きながらえる術 から
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「科学の原理 - 山本貴光吉川浩満」高校生のための科学評論エッセンス ちくま科学評論選

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5位(アクセス4)は

「英語の情緒性、日本語の論理性 - 杉本良夫」ちくま文庫 日本人をやめる方法ー杉本良夫から から

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6位(アクセス3)は多数。

 

「科学の原理 - 山本貴光吉川浩満」の冒頭で、

『科学とはなにか? という議論にはさまざまな回答の試みがありますが、ここでは生物学者池田清彦による整理が参考になります。
池田によれば、科学は真理を目指すのではなく「同一性」を目指す営みです。変化する自然現象を、変化しない同一性(言葉)で記述すること、これが科学の営みだというわけです。簡単すぎるくらいですが、これ以上の定義はありません。』

池田清彦氏の言が引用されている。で、その池田氏の作品を紐づけ致しました。

「退屈こそ人生最大の楽しみである - 池田清彦新潮文庫 他人と深く関わらずに生きるには から

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/32319286/

 

タンポポの絮を見て、

此の翁 白頭 真に憐れむべし、 これ昔、紅顔の美少年(劉 希夷)

と、涙を濺ぐ。

 

 

(巻四十)これからが丸儲けぞよ娑婆遊び(小林一茶)

4月23日火曜日

 

(巻四十)これからが丸儲けぞよ娑婆遊び(小林一茶)

 

曇り。朝家事は特になし。夜すすぎを外に干す。生協へお米ほかを買いに行き、駄菓子を千円ほど買う。今日の午後から明日いっぱいは雨らしいので、備蓄。

昼飯喰って、一息入れて、散歩には出かけず座椅子でごろ寝。

起きて、栗原はるみの粉を入れたシチュー鍋の番を致す。

Bethさん撮影の岩淵水門に挑んだが、歪んだ上に色など着けたものだからまことに酷い作品となった。破ろうかと思ったが、反省の材料、明日への糧として残した。

夜、前の前の会社のAさんからお役所との折衝結果を教えて頂いた。

税関の海側の軒燕来る(仲寒蝉)

願い事-ポックリ御陀仏。知らずに仏。

 

タンポポの絮を目にして、

此の翁 白頭 真に憐れむべし、 これ昔、紅顔の美少年(劉 希夷)

と、涙を濺ぐ。

昨日はブログ「随筆筆写」に48人の方が訪れ、53のアクセスがあった。アクセスのトップ(アクセス7)は

サザエさんの性生活 - 寺山修司」角川文庫 家出のすすめ から

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「東京-大阪、深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと - スズキナオ」

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3位(アクセス4)は

「かたちのレビュー(抜書:サントリーオールド、団地、蚊取り線香) - 鷲田清一」生きながらえる術 から
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4位(アクセス3)は

「民芸の美(小学六年) - 柳宗悦」文春文庫 教科書で覚えた名文 から
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「運転士や車掌は何を食べていたか - 岩成政和」国鉄食堂車の繁盛記・食堂車バンザイ! から

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「詐欺幇助罪の成立が認められた事例 - 同志社大学教授十河太朗」法学教室2023年5月号から

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7位

「私の見た大阪および大阪人(一部抜き書き) - 谷崎潤一郎岩波文庫 谷崎潤一郎随筆集 から 

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/32306573/

「科学の原理 - 山本貴光吉川浩満」高校生のための科学評論エッセンス ちくま科学評論選

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/33397711/

「スキャンダル - 嵐山光三郎」悪党芭蕉 新潮文庫 から

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/33516620/

 

で、「性生活」と「スキャンダルー芭蕉」を一石二鳥で紐づけ致しました。

「俳句と詞書(選) - 堀本裕樹」新潮文庫 短歌と俳句の五十番勝負 から

https://zuihitsuhissha.exblog.jp/32639854/

 

 

 

映像性談

あれを見るだけならコンピレーションが便利なのだが、やはりあれを見るだけではすぐ飽きる。一編の三分の一から半分を出演者の身の上話に割いているシリーズがある。女優さん扮しているものもあるが、風俗のお姉さんたちの身の上話には唸らされる。藤森里穂という人気女優さんの身の上話も、そうだったんですか、と聞き応えがありました。

その藤森さんのこの初期の作品がとてもよろしい。

https://www.xvideos.com/video62468767/261ara-415_https_is.gd_8qm9s9