(巻八)燕来る時になりぬと雁がねは本郷(くに)思(しの)ひつつ雲隠(くもがく)り鳴く(大伴家持)

長年使ってきた座椅子がぼろぼるになり、処分することにした。
座椅子ではあるが、私にはビジネスクラスの座席であり、土日祭日の午後のお昼寝を旅にしてくれる、魔法の座椅子であった。

はるかまで旅していたり昼寝覚(森澄雄)

細君から譲られた、後継座椅子は、どう見てもエコノミークラスだ。まだ乗ったことはないが、LCCの詰め込み座席まで落ちたのかもしれない。

相席に目涼しく遣われし(小澤克巳)

飛行機の座席と言うと、デビッド・ロッジの小説「スモールワールド」のいちシーンを思い出す。
航空会社のチャックインカウンターで働く登場人物の女性は、仕事上、誰を何番の席に座らせるかと言う、運命を操れる立場にいた。
そして、彼女が作る色々な男女の組合が物語を展開させていく、という仕掛けであった。

紫蘇しげるなかを女のはかりごと(桂信子)

角川俳句九月号を確保した。

理髪師に頭預け目借時(斎藤秀雄)
段々と本気になりて水鉄砲(片平るみ)

のニ句を書き留めました。

鶴岡加苗氏の作品が精鋭10句競詠に「果報」と題し掲載されていた。

四つ折の千円ひらく夜店かな(鶴岡加苗)

の句を書き留めていたので注目したが、生活感のある句はなかった。

普通の俳人は一期一句なのかもしれない?