(巻十五)つちふるや嫌な奴との生きくらべ(藤田湘子)

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6月8日木曜日

着る物にはお金を掛けないので自分で衣類を買うことはあまりない。ましてや衝動買いと云うのは殆どなかったが、新橋を歩いていたら店先に柄物のシャツが並べてあり、目を引く柄があったので値段を見た。千二百円で綿35%と表示されていて、サイズは39ー80、ボタンダウンでもない。衝動買いをした。

言い訳のように夫のシャツも買う(西野恵子)

相当長い間売れずにワゴンの上で晒されていたようで、レジのお姉さんが丁寧にビニールのラップに積もった塵を拭き取ってくれた。そんな代物である。こう云う買い物をした日は何となく気分がよろしい。

涼風に晒して残る薄き自我(北原喜美恵)

柄物・色物のシャツを着るようになったのは六十を過ぎてからで、それまでは白シャツで織り柄も避けていた。今はブルー系、グレー系、薄いピンク系、白柄系と随分お洒落になった。

大正のロマンが好きと色の足袋(尾畑悦子)

雨の日はグレー系に決めている。週の頭は白柄系、半ばはブルー系、そして、週末はピンク系で回している。

寄り道は“司”と云う婆さんが一人でやっている店にしてみた。

ばあさんも女将と呼んで冷し酒(潤)

おでんが食いたかったがない。鯵のたたきで二合いただき千四百円である。付きだしがついたが、余計なものはいらないなあ。
ここにもよく喋る爺がいて、よく喋る。聞けば奥さんに先立たれ“男やもめ”とのことだ。一日(ひとひ)誰とも口を効かなければ喋りたくもなろう。

冷や酒や先逝きひとののろけ哉(潤)