(巻二十二)贅沢は敵と育ちぬちゃんちゃんこ(土屋秀穗)

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5月30日木曜日

アーティは明日が最終日であたしゃ明日はお休みで、そんだもんで今日が最後で帰りに際に多謝いたしました。
誠実な方でしたので入所から今日まで何とか過ごせたのもアーティのお蔭でございます。改めて多謝。

月末で勤務時間の登録の締め切り入力をアニーに手伝ってもらって完了し、谷中段々に急いだ。
酒屋の軒先には森さん、ボクサー、それに新顔の両国の隠居がビール函の席に陣取っていた。筋向かいには前回同様にテキヤの姐さんが袋物の露店を張っていた。
あらためて外から店の写真を撮ってみて、この店が『大島酒店』と認識した。
前回味をしめた牡蠣の缶詰と酎ハイをいただきに店の奥に進むと猫が店番をしていたので一撮いたした。
店の八十歳になるという女主に訊けば十七歳だそうだ。人も猫も達者である。
両国の隠居が筋向かい宅にある枇杷のたわわなるを認め、『枇杷だ!』と指差して急に立ち上がり転倒した。幸い怪我はなかったが、同行の妻女と店の女主の両方から酒を取り上げられてしまった。
あたしも『枇杷だ!』の声につられて振り向いたが、なかなか見事に実っていた。江戸の町と枇杷はなにか結び付くものがあるのだろう。

六時でもまだまだ明るいが、店先の老人たちの上がりは早い。
あたしも涼しい風を背に受けて日暮里駅へと大島酒店をあとにした。