(巻十二)先生の話を聞けよ葱坊主(今瀬一博)

10月17日月曜日

秋彼岸 過ぎて今日ふる さむき雨 直[すぐ]なる雨は 芝生に沈む (佐藤 佐太郎)

呆けの進行を遅くするために、句歌を思い出すよう努めている。今朝、庭石を四つ踏んで道に出るまでに佐太郎の歌が思い出せた。


今晩の買い物メールが“ジャガイモ、きうり、バター2個、ラップ2個、カレー粉、頼めますか?”と入った。細君のレパートリーは豚肉が鳥肉を醤油か味噌かカレー粉で味付けしたものに限られているので当家ではカレー粉の消費量が高いものと思われる。

菜の花を挿すか茹でるか見捨てるか(櫂未知子)


これに魚が付くが、焼き魚は出ない。手間と後片付けを省くため最近はやたらと電子レンジで蒸した魚が出される。単に蒸した魚に醤油とスダチのタレをかけて食すのである。
野菜は肉料理のときにフライパンの端で一緒に炒めたものか、カレーポトフなどのように一緒に煮込んだものである。
味噌汁はもうひと手間かかるのでなかなか付かない。

献立の手抜問はれし花疲れ(岡田順子)

これらの料理のようなものはすべて細君自身の健康管理のため塩分も量も少ないが、母も料理に無頓着であったので我輩の舌は肥えていない。
であるから、
“今晩のは味噌にヨーグルトを足してみたのよ。美味しいでしょ!”
“ああ、いつもと少し違っていいね。”
と答えることができる我輩は模範亭主なのである。そして細君も歳を重ねたのだ。

主婦の座に定年欲しき十二月(塙きく)