(巻十四)木と生まれ俎板となる地獄かな(山田耕司)

4月4日火曜日

駅前の本屋が潰れた。レコードにしろ本にしろ媒体産業はITに真っ先にやられてしまった。
衣食住は仮想では済まされないので、これは残るだろうが、次は何が消えていくのだろうか?

露の世のなほも仮想の世に遊ぶ(近藤七代)

駅前の本屋は無くなったが、駅ナカの本屋はまだ店をたたんでいない。が、この小規模な駅ナカの本屋もどれだけもつのであろうか。そもそも本屋と言えるほどの本を置いていない。雑誌・コミック・文房具という、終局への三点セットが前面に占めている。文庫の棚もあることはあるが、漫画の延長線にあるような読み物が多い。その中に佐藤愛子の『こんなふうに死にたい』(新潮文庫)があったので買ってみた。佐藤愛子の本は読んだことがないので判らないが、23頁以降はお気は確かですか?と思うところもあり、頷くところもありである。
そのなかで佐藤愛子さんが一句発句されているのでご紹介する。

煩悩の頭剃りかね昼寝する

瀬戸内寂聴に剃髪を勧められたが、お断りしたときの句だそうだ。

独りとはかくもすがしき雪こんこん(瀬戸内寂聴)