考えず読まず見ず炬燵に土不踏(伊藤松風)

イメージ 1

4月12日木曜日

朝と昼休みの読書・筆写に

葛飾の思い出 - なぎら健壱ちくま文庫 下町小僧 から

を選んだ。書き出しは

“家の近所に、用水路が流れていた。幅が10mぐらいはあり、川と呼んでも良いぐらいであった。その用水路にはちゃんとした名前があったのかも知れないが、僕達はただ、用水と呼んでいた。その用水は灌漑用水だったと思うが、水源は今では水元公園でお馴染みの小合溜(こあいだめ)で、そこから延々流れて来ていて、新宿を通り先は高砂の方まで流れていた。高砂の方までとはいうものの、一体どの辺りまで流れていたのか思い出そうとするのだが、記憶は新宿の辺りでプツリと途切れてしまっている。”

である。
育った土地である“新宿”とか“高砂”という地名も懐かしいが、用水路にはなお一層の懐かしさが湧いていくる。
なぎら健壱さんの飾らない文章は思い出を語るに誠にぴったりであり、使われている漢字の正しさは大変勉強になります。
なぎら氏は1952年生まれと紹介されている。同い年である。同じ少年期をほぼ同じ地域で過ごしたわけだ。同世代の同地育ちの方にはお奨めの読物であります。

葛飾や残る水田の濁り鮒(大竹節二)

そして今、私は新宿から中川を渡った亀有に住んでいる。

その亀有の棲みかである団地では年に一度の配水管の高圧洗浄があった。細君が昼寝を我慢して作業に立ち会い無事終了とのことである。

しづむもの沈めて水の澄みにけり(松本ヤチヨ)

洗濯機の排水口の洗浄がやはり大変のようだ。洗濯機を少し横にずらして排水口を露出させて洗浄し、洗濯機を元に戻して試運転までが一連の作業のようだ。
細君は取説を用意していたが、作業の方は“分からない洗濯機はないですよ!”と豪語されていたそうです。何事も餅は餅屋ということですね。

おおまかな剪定にして狂ひなし(高橋将夫)

その細君の食卓での時事ネタは、警察官の警察官射殺事件と新生児取違い事件であった。
細君のお考えでは警察官事件に関しては“三人勤務のところで一人休んじゃったから、それで二人になっちゃったのがいけないのよ。”と勤務体制が良くなかったと分析していた。
新生児事件では、不倫の濡れ衣で離婚されて苦労された方にとてもとても同情しておりました。

寒雷に若き巡査が照らされて孤独に耐える深夜の交番(飯田幹也)


私は時事ネタをよく知りませんでしたし、

考えず読まず見ず炬燵に土不踏(伊藤松風)

が世の中へのスタンスです。