(巻十三)罠ありと狸に読めぬ札吊し(村上杏史)

2月1日水曜日

昨晩、火曜日の寝床でニッポン放送“オールナイト・ニッポン10”を聴いた。名取裕子さんがパーソナリティーで端唄小唄なども織り込んだ団塊辺りを想定してのプログラムである。お便り募集のお題が出て“地球最後の日の晩餐に何を戴きたい?”であった。お題紹介の折り、「わたし、玉子かけご飯。」と裕子さんがチョロっと洩らされたが、我輩の裕子さんに対しての好感度は一挙に上昇した。

ヒキガエルつるり腑に落つささめごと(阿川木偶人)

我輩も玉子かけご飯は大好きであり、これを海苔に挟んで戴くのはこたえられない。

白金のご飯黄金の寒卵(日下光代)

英字紙を切り抜いて読んでいるが、今、Should we get rid of cash? - by John Lanchester (現金の廃止)という記事を読んでいる。

昨年末にインド政府は五百ルピーと千ルピー札を廃止し、所有者は年末までに銀行に預金するか、少額紙幣と交換させるという強硬策を打ち出した。預金・換金の際には取得経緯と納税について説明しなければならない。

秋風やなまあたたかき札の束(和田耕三郎)

この強硬策は所得税の納税者が国民の1%に満たないという現実があるという。

烏瓜税につく嘘相似たり(川畑火川)

また、景気浮揚のために国民に支出を求め、公定歩合などを0%にしても、或はマイナス金利にしても、現金でしまい込んであるので手がつけられない。

死金を一壺に蓄めて紙漉婆(近藤一鴻)

箪笥預金を不可能にして銀行に預けさせて、マイナス金利にして目減りで脅し、金を使わせて景気を浮揚させようというのが為政者の魂胆であるという。

悪知恵の膨みに似て雲の峰(能村研三)

現金は麻薬組織など金の足跡を辿られたくない犯罪者には無くてはならないものだそうだ。百ドル札を無くして十ドル札までにすると、麻薬組織は十倍の札を運び保管しなくてはならない。犯罪組織撲滅の点から高額紙幣の廃止を提唱する学者もいるという。

悪玉が笑へりかがやき盆の月(石原八束)

この記事の筆者は現金の廃止には現状では反対しており、筆者曰く、
富裕層は資産を隠し、税を逃れる手段をふんだんに備えているが、庶民には現金をしまい込んでおく以外に権力への対抗手段がない。富裕層に対する厳正な課税制度が確立するまでは現金により庶民にも富裕層と同じく対抗手段を残すべきだ。

埋蔵金隠し続けて山眠る(原田要三)