(巻十五)神宮の夕立去りて打撃戦(ねじめ正一)

5月17日水曜日

親分から一献の御誘いを頂き神田コーラクに立ち寄る。大将が仏頂面しているので稀勢ノ里が負けたのは分かった。
巨人が負けているテレビを見ながら、差し障りのない話をしてしばらく呑んでいた。

熱燗の余勢をかつて人物評(高澤良一)

二杯、三杯と重ねたころから、お互いの身の振り方の話となった。既に一回戦を終わった者同士であり、また世の中の激変がなければなんとかなる身の上であるから深刻な話ではない。親分もすでに六十二歳であるし、資産たっぷり余裕綽々である。ただ親分の人柄として残った子分どもが右往左往しないようにしておきたいと云う思いは強い。我輩もこのあたりが潮時である。いや、ちょっと引きずり過ぎたのかもしれない。

親方の親切に泣き夜なべかな(高浜年尾)

スワローズが七点入れたころ酔いも回りコーラクを出た。親分は立ち食いそばが好物なので吉そばで天玉を並んでいただき別れた。