(巻十五)人それぞれ書を読んでいる良夜かな(山口青頓)

5月19日金曜日

一昨日親分と神田のコーラクで一杯いたしたが、立呑屋でだだをこねて椅子を出してもらった。我儘のお詫びを兼ねて今宵も立ち寄った。何しろこの店で座って呑めるのはご町内の大御所(町名主)だけなのだ。

さすたけの君がすすむるうま酒にさらにや飲まんその立ち酒を(良寛)

立ち酒と立呑が違うということはこの歌で知りました。

立ち酒が立ち飲みとなり西日落つ(能村研三)

帰宅後は遺物の整理だ。写真は残さないようにしてきたので、人生のひとこまを集めても百余枚であり、小型版のアルバムに収まる。遺品で処理に困るのが大量の写真だと聞いたこともあるがこのくらいなら古新聞に紛らせて処分できよう。

この世には何も残さず障子貼る(須賀ゆかり)

名刺も退職の際に大分シュレしたが、外国分のホールダーが何冊がでてきた。ヒースローやマニラの方たちの名刺の綴りとキャンベラでの研修のときに頂いた名刺で300枚ほどあった。名前から顔が浮かんだのは1割にも満たずである。
我輩の今の名刺も残り50枚ほどであるが、印刷をお願いするのはやめておこう。これだけあれば余るだろう。

梅雨深し名刺の浮かぶ神田川(坂本宮尾)