(巻八)ひとよさに葉をふりすてて立つ樹樹の意志さばさばとすこやかなりき(齋藤史)

世はお盆の旅行者でいっぱいだ。

中吊りに求ム旅人夏休み(松枝真理子)

そこで私も旅人になろうと、サーモンの寿司おにぎりと吉乃川を買い込んで上野駅からグリーン車に乗った。
グリーン車での晩酌は生きている喜びを与えてくれる数少ない贅沢である。
つまみはチーズが主流で、これにかに棒や竹輪などの練り物が候補となっている。
こんな贅沢をしているのに文句を言ってはいけないのだが、
チーズにしろ、かに棒にしろ、竹輪にしろ、おむすびにしろ、包装がやたらと厳重で、開封に苦労する。
愉快犯というのか、小規模無差別テロと言うのかわからないが、異物混入を謀る輩がいるので、製造者もガードを堅くしているのだろう。
しかし、簡単には矧がれないラッピング、切り口の頑丈な密封ビニールを攻略してご馳走にありつくのは、指先の力が弱ってきた年寄りにはつらい作業である。


ジャム瓶の蓋の手強き二日かな(玉田春陽子)