(巻八)簡単な体・簡単服の中(楷未知子)

同期が集まって飲んだ。
そもそも、お役所の都合で束になったグループであるから、人生観・価値観・趣味などを共有してはいない。

夜の秋酒の好みのみな違ふ(古田紀一)

それでも、二十代の始めを共に過ごした因縁で年に二度、当時の職場教官の出席を頂いて飲んでいる。

税関の海側の軒燕来る(仲寒蝉)

話がいい方向に向かえば、座は華やぐが、つまらない現役当時の自慢話になれば、当然白ける。

ビヤガーデン話題貧しき男等よ(吉田耕史)

今晩は、昔の人事話などで白けたが、面白い話が聞けることもたまにはある。

役終へたままのアンテナ夏の雲(千波)

雀さんに博愛であるのなら、そういう話にも寛容でなければ。
では、なぜ、私がこの集まりに出るのかと言えば、教官が粋人であるからだ。
今宵は十分にお話をうかがえなかったが、次の機会を楽しみにしょう。

詫手紙かいてさうして風呂へゆく(種田山頭火)