(巻十三)浴衣にも身八口あり桜桃忌(神蔵器)

11月22日火曜日

布団を畳んでいるところで地震が来た。最初に襖がぶるぶると振動した後に本揺れが来たが、いつもの茨城県や栃木県を震源とする内陸地震とは違うと感じラジオをつけた。福島県浜通り沖で津波警報発報と伝えていたの大きな被害がでなければよいがと思いつつ早めに家を出た。

定年の男が叩く干布団(井上玉枝)

野田線常磐線ともに五分程度の遅れで運行されていて混雑もなく有楽町駅に到着した。変わったことと言えば野田線ではダイヤの乱れのため“女性専用車”を中止するとアナウンスしていた。

女体とは揺れ異なれる桜かな(小林貴子)


帰りの列車では同年輩の御仁と相席となり、六年前の地震の帰宅苦労話などしながらそれぞれのカンチュウハイを啜った。我輩はいつも窓側に座り快く隣席の方を空けておくが、わざと通路側に座って二座席の占有を謀る不届き者がいる。呑んべいに座られるのが嫌なのだろう。そういう訳で呑んべいは飲んでも差し支えない呑んべいの隣にやって来るものである。

合席席も淋しき人かおでん酒(原田青児)

今日はいい夫婦の日であることを間一髪で思い出した。老夫婦ではあるが、まだそのことが話題になるありがたい細君である。

連添って宝なりけり秋扇(加藤郁哉)