(巻十三)社会鍋僅かの銭をそつと入れ(塩川雄三)

1月19日木曜日

たまにはお仕事の噺でもいたしますか。

仕事しに行くかマフラー二重巻(津高里永子)

希少動植物の保護を目的としたCITESと言う国際条約(日本では“ワシントン条約と言われている)があり国際取引を規制しているのでござる。
時々、規制対象の動植物の見直しが行われ、つい最近1月2日から新しい種の動植物が規制リストに加えられた(植物2日から、動物3日から)。その中に厄介な代物があり、特殊な羊とその派生物が規制の対象になった。

ごくまれに闘志湧きくる雲の峰(桂木遥)

そんな“ある特殊な羊”の取引はないし、そんな羊の毛で編んだセーターの輸出入もないのであるが、ウール製品を輸出入して税関を通す(通関という)際に元の羊毛が“ある特殊な羊”から刈った毛ではないということを証明することが必要になった。

セーターに首入れ今日を始めけり(三浦善隆)

通関の際に税関に提出する書類に輸出入ウール製品に使用された羊の学術名が記載されていなければならない。

木がらしや不学者論に負けずけり(日夏?介)

まあ、ここまでは止もう得ないのであるが、具体的なお達しが紙で出ていないので関西の税関さんと関東の税関さんで取り扱いに違いがあったりするのである。

秋風や模様の違ふ皿二つ(原石鼎)

我輩はこのドタバタの圏外にいるので被害はないが、携わっている“民間人”は帰宅が遅くなるな。

伸ぶるだけ首を伸ばして鳥帰る(柴田佐和子)