ご内聞に 其の三

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一応、本堂に参拝し、掃除の終ったトイレを拝借し、さてどうしようかと辺りをキョロキョロすると田中屋さんと云う御休処が店を開ける準備をしていた。10分もすれば商売を始める様子だったので伽藍を一巡りして時を待った。
店先に縁台も出たので、もうよかろうと、「もう、いいですか?」と伺うと、「まだだけど、まあいいわ。」と入れて貰えた。


公園の茶屋の主の不愛想 (高浜虚子


婆さんが二人でやっている店のようだ。本物の婆さんたちだが、化粧の仕方などに泥臭さがない。
品書きを見るとコーヒーが400円となっている。ここで400円払ってコーヒーは飲みたくない。朝酒にすることにして、ビールを頼み、ツマミにおでんと考えたが、朝から重いので、心太をツマミにすることにした。


心太強気弱気の繰り返し (前田久栄)


愛想もなく出された心太でちびちびやっているところに常連客らしい、これも本物の、おばさんが入ってきた。
三人の話が始まり、我輩は取材の体制に入った。
先ずは世間話でおばさんの息子の話などしていたが、婆さん二人とおばさんの会話である、辛口の世評へとエンジンが回り始めた。
先ずは、店の前にある銀杏(いちょう)の木から落ちる銀杏(ぎんなん)を拾いに来る人達への苦言である。
「拾いにくるのは、いいのよ。でも、その場で殻剥いて、中身だけ持ってくもんだから、殻だらけ!殻が臭いのよね。まったく嫌んなちゃうわ!」
で始まり、どんどん出てくる。大宰の話なんかも出てきたりするので、只者ではない婆さんたちのようだ!
そのうちに、婆さんがおばさんに近く(法華経寺から400メートル)にある市川市東山魁夷記念館の無料券をおばさんにあげる話になり、面白い話を傍聴させていただいた。
市川市が馬鹿だから、魁夷の作品は全部持ってかれちゃって、何にもないのよ!」
こう云う話を聴くと天の邪鬼の血が騒ぐ。
早速勘定をして、魁夷記念館への道筋を訊いた。