(巻十六)次つぎに木の名を告げて先を行く君の背より生るる山道(染野太朗)

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1110日金曜日
 
本日はめずらしく何件かご相談をいただき午前中を過ごしました。
 
その中で関税率表の品目分類についてのお話がございました。
輸入品の関税率はそれぞれの輸入品により異なったおりまして、世界中で統一された品目分類表(HS)を用いてそれぞれの輸入品の当てはまる番号(税番)を決定します。この税番ごとに基本税率、協定税率、特恵税率、暫定税率経済連携条約による税率が決められています。品目分類表に税率表を合わせた関税率表は以下のアドレスでご覧いただけます。 
(日本語版)
(英語版)
 
税番は大きく“類”と云う括りで1類の「動物(生きているものに限る)」から97類の「美術品、収集品及びこつとう」に分かれております。なお、77類は将来の未知の品目を分類するために使用されておりません。
 
さて、本日興味を覚えた輸入品は機械類に使用される鉄鋼で製造された「支持具・取付具」でございました。輸出国の生産者はこの品物を83類「各種の卑金属製品」に分類されるものと判断し、83類の一次細分である8302項に当たるとして関係書類を作成しております。
この生産者の判断に基づき税関ご当局に税番8302..49協定税率2.7%により輸入納税申告いたしましたところ、この輸入品の税番は7326.90基本税率0%が正しいとの指摘があり、訂正し輸入が許可されました。関税が無税になったのですから文句ないでしょ!とのお考えもあるのでしょうが、国際的に流通させている品物の場合、ブレの発生を嫌うこともございます。
以下は、関係する項の規定の和文と英文でございます。
 
8302
卑金属製の帽子掛け、ブラケットその他これらに類する支持具、取付具その他これに類する物品(家具、戸、階段、窓、日よけ、車体、馬具、トランク、衣装箱、小箱その他これらに類する物品に適するものに限る。)、取付具付きキャスター及びドアクローザー
 
Base metal mountings, fittings andsimilar articles suitable for furniture, doors, staircases, windows, blinds,coachwork, saddlery, trunks, chests, caskets or the like; base metal hat-racks,hat-pegs, brackets and similar fixtures; castors with mountings of base metal;automatic door closers of base metal.
 
7326
その他の鉄鋼製品
 
Other articles of iron or steel
 
この問題の考察にあたり、先ず税関の指定した税番が7326項であったことが重要でございます。もし特定の機械の専用部品であればその機械の分類される項、又は類する機械類の部分品として指定されている項に分類されますので7326項には分類されません。従いまして、ご当局は問題の品物を特定の機械の専用部分品とは判断していないものと思われます。
ここからは、伝聞に基づく推論の展開となりますので、その点については予めご承知おきください。
先ず、この品物の形状・機能が8302項の規定にある「支持具、取付具」に当たるということについては、ご当局の認識も一致しているとのことです。しかしながら、ご当局は品物が機械類に使用される品物であることから、「(家具、戸、階段、窓、日よけ、車体、馬具、トランク、衣装箱、小箱その他これらに類する物品に適するものに限る。)」の範疇に入らず、従って8302項には分類されず、材質が鉄鋼であり、鉄鋼製品の中に支持具、取付具」を個別に分類した項がないことから、その類、つまり73類「鉄鋼製品」の最後の項、7326項「その他の鉄鋼製品」を指示したものと推測いたします。
 
この品物の分類におきまして要となる分類規定は8302項の規定であろうかと存じます。
その核心は、和文では「その他これに類する物品に適するものに限る。」であり、英文では「suitablefor …….or the like」の解釈によるものかと愚考いたします。
和文規定においては、「卑金属製の帽子掛け、ブラケットその他これらに類する支持具、取付具その他これに類する物品」と類するを二度用いて主体の範囲に対して含みを持たせていると思います。その一方で「(家具、戸、階段、窓、日よけ、車体、馬具、トランク、衣装箱、小箱その他これらに類する物品に適するものに限る。)」と客体に対しては限定的な記述となっているため、「これらに類する物品」を先行する物品に類する物品と狭く考える解釈があると思います。
 では英文規定はどうかと見ますと、”suitable for furniture, doors, staircases, windows, blinds,coachwork, saddlery, trunks, chests, caskets or the like;”と明確には限定せず含みを持たせていると思います。
この和文・英文の記述の違いが例示物品にない機械類に使用される「支持具、取付具」の分類に違いを生じさせたものと思いますが、
いくら“私”が思ってもしても仕方がありません。ご当局の分類事例を調べてみましたところ、日本税関の事前教示回答と米国税関の照会回答事例にそれぞれ参考となる事例を見つけることができました。
(日本税関)
 
(米国税関)
 
日本税関の事例では精密機械の設置に使用するもので客体は機械です。
国税関の事例では航空機のブラックボックス設置に使用するもので客体は航空機で、キャビン等ではなく運航機器です。
 
以上、愚考するに、日本税関は実行上英文に沿った含みを持った解釈を採っているものとも推測できますが、日本で適用される法律は日本の法律、つまり和文規定ですので、その解釈が狭義であればご当局の指示された7326項が誤りとも申せません。
 
以上、愚者の愚考を一笑に付されますことを末尾ながらお願い申し上げます。