(巻三十三)過ごし方知らぬ未熟の花の昼

(巻三十三)過ごし方知らぬ未熟の花の昼

6月6日月曜日

予報通りの雨が朝から降っている。細君は暇潰しに妹に電話して長々と駄弁っていた。妹の家庭もとうの昔に子育てが終わり円満円熟である。聞こえてくる範囲では不満もなく、「こんなもんで、よかったんじゃない?」などと云っている。

あぢさいや姉妹のだれが雨女(赤松湘子)

梅雨に入ったそうだ。雨で外出せず。

《飛行機は羽田空港の滑走路に着陸し、がたたたた、と細かく震えながら到着口を目指してのろのろと前進している。

そして私は、着陸してから完全に静止するまで、こんなに飛行機というものは地面を移動するものなのか、と、頭の片隅でじりじりしつつ、ひたすら五十八歳の大人らしい謝罪の言葉を頭の中でシミュレーションするが、それでいて口から出てくる言葉が「もうしわけありません」と「すみません」ばかりであることに、顔面蒼白になっていた。》

と、始まる小品、

『「チノパンと赤ワイン - 松尾スズキ」人生の謎について から』

を読んでいる。

機内サービスの赤ワインを隣席の他人のチノパンにかけてしまい、幸い被害者が“大人”で謝罪は受け容れて貰ったが気まずい思いをした、というお話だ。

それがよい読み物になっている。筆者紹介に依れば芥川賞候補に3回なっていらっしゃる由、芥川賞候補作家の作品は流石にちがう!しりあがり寿氏を知り、それからリリー・フランキー氏、そして松尾スズキ氏と今まで聞いたこともなかった作家の作品を読み始めた。

願い事-生死直結で細君より先に知らないうちに叶えてください。「こんなもんでよかったんじゃない」ではある。が、やはりこんなところに出て来るんじゃなかった。早いとこ静かに元に戻してください。

Life is a small gap between birth and death, and everything will fall into place.