平成二十六年自選二十句

官を辞し大黒さまに初詣
重ね着や更に重ねて二重足袋
銘酒より冬の真水の酔いざまし
春雨や十色の百の傘交じり
まっつぐに舗装の継ぎ目草の筋
春の月なにに怯えて寝付かれず
雨が打ち堀に追われし桜かな
質草やみどりは淡し初鰹
二十日ころあいさつなしにつばめ立ち
早乙女や帯でまとめし渋浴衣
譲られて夏のつり革揺れにけり
独居やイヤヨイヤヨの扇風機
湧く雲や振り向けば鰯雲
見上げれば真半分の秋の月
ひと掃きの枯れ葉摘みけり浮世床
晩秋に産業医説く老病死
煙なき秋刀魚の味や二十階
足腰のしっかりしたる時雨かな
陽だまりやいても目立たぬ老いの苑
考えて今宵の鍋を定めけり