(巻十二)子狐の風追ひ回す夏野かな(戸川幸夫)

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10月6日木曜日

成田空港貨物地区で行われる輸出貿易管理令の講習会を受けるために成田空港へ行った。講習会は午後からなので午前中は旅人となり成田山を訪れた。

一駅が今日の旅なり鳥雲に(萩野美佐子)

お寺自体にはあまり興味はないが参道の店々を覗きながらぶらぶらと歩くのは楽しい。
参道に入り間もなくすると“三橋鷹女”の像と来歴の案内板があった。まだ出来立てのホヤホヤの像のようで、それなりの渋さや、侘び寂びを漂わせるには歳月を要するにようだ。(写真2)

侘びを知れ寂びを知れよと古茶の云ふ(相生垣爪人)御名前の誤り蒙御免

案内板には鷹女の代表句として四句が紹介されていた。うち二句は吾人の句帳にも控えてある。

夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり(三橋鷹女)

千の虫鳴く一匹の狂ひ鳴き(三橋鷹女)

参道の入口近くの建物のは三四階建てのビルであるが、その中に傾いたような二階屋の刃物屋があった。

湯婆などむかしむかしを売る小店(杏田郎平)

売り物の並べ方もやる気があるのかね?と問いたくなるほど雑然としていて包丁の横に鋸が置かれ、その前に屑拾いの“はさみ”道具(語彙不足)が立て掛けてあるといった具合である。爪切りが売りたくも無さそうに並べてあったので足の爪の切り易そうな大きく刃先の開く(つまり上の刃と下の刃の開き幅)ものはないかと店構えと同じくらいヨレヨレの爺さんに尋ねた。
爺さんは表層に並んでいた爪切りを雪掻きの如く掃き寄せて、埋もれていたニッパ型の爪切りをサルベージ(語彙不足)した。刃先の開き具合が十分あるかパッケージから出して試したら元の鞘に納まらなくなったが、刃先の開き具合は大丈夫だったので買い取った。

爪寒しこれのみ懈怠なく伸ぶよ(石塚友二)

代金1750円を受け取ると、爺さんはやっと商売をしていることに気が付いたのか、
「お詣りでございますか、天気が良くて宜しゅうございましたね。此処のところ雨つづきでございましたから。」と愛想を言った。

甚平やそろばん弾く骨董屋(大串若竹)

お詣りの戻り道で店の写真を撮ろうと思ったが閉まっていた。(写真1)