(巻十二)鉄橋の長さを耳で目借時(渡部節郎)

10月21日金曜日

今日は一人で事務所のお留守番である。幸いまだ電話は入ってこないが、英語でかかってくることがあるのでそのつもりでいないと狼狽える。しかし英語であろうが日本語であろうが、

風邪声で亭主留守です分かりませぬ(岡田史乃)

のお応えになるので自動応答録音と大して変わりはない。

20年程以前、お役所に属していたころ、チェンマイの屋台でお偉いさんと呑んでいたとき唐突に「(海)外に出す奴には何(能力)が要るか?」と訊かれたことがあった。
「仕事を知っていること、英語がこなせること、それにITかと、愚考つかまつります。」と答えたが、概ね当たっていたと思う。そして今、国内でもそうなってきた。

仕事しに行くかマフラー二重巻(津高里永子)

一葉忌舞妓の通ふ英語塾(荒井書子)

ITの今浦島や春寒し(藤岡尚子)

英語がこなせると云うのは“電話会議”などでネイティブが交わす話についていけて、しっかりと読み書きが出来るレベルである。

さくらんぼ笑で補ふ語学力(橋本美代子)

この歳ではそう云うわけにも行かず困っておる!周囲には日本語の駄洒落まで理解する外人がいるが恐れ入谷の鬼子母神でごさる。

水桶の水に浮かべて春の月(ベール・ウェストベリィ)


帰路、NHK俳句11月号が出たので盗みに入ったが獲物なし。手ぶらで帰るのも癪なので、

無事は是貴人といへり蕪蒸(森澄雄)

を書き盗った。