(巻十二)水着買ふ母子その父離れをり(福永耕二)

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10月20日木曜日

過日、ちょっと呑んでの帰り道に最寄り駅そばの居酒屋に仕上げに入った。いつもの道筋とはちがうので気付かなかったが三年になるそうだ。もとは和菓子屋だったところである。
この街はバブル前に開発されたので景気がよかったころの名残が探せばみつかる。
その元和菓子屋は隣りの洋菓子屋と並んで往時はこの界隈ではそれなりの名店であり店の構えも蔵をイメージした金をかけた造りであった。バブルバーストが原因なのか主人の浮気と離縁が原因なのか定かではないが、客足はそれほど遠退いていなかったにも拘わらず、店は閉められた。元若女将が宅配便の三輪車を曳いているのを見たことがあった。

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さて居酒屋であるが、チェーン店ではない。やりたくて親爺が始めた店のようだ。その意味ではよく三年もたせている。
カウンターに五席、テーブルが一卓で四人、座敷があり、ニ卓で八人で満席である。客は座敷に二組四人であった。
親爺は五十代か?それにバイトの女の子の二人でやっている。バイトの女の子は居酒屋系のバイト経験はないようで、浦霞をおっかなびっくりついで升から溢れさせていた。独立系の飲み屋であるからやはり割高である。刺身と浦霞、それに腹ごなしに焼おにぎりを頼んだが、はっきり言ってお刺身は品書きから外したほうがよかろう。

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チェーン店とのちがいはやはり愛嬌である。親爺も世辞は言うし、サービスのライターもくれた。女の子も“この店いつからあるの?”と訊けば話相手としての応えをしてくれる。

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酒が飲みたいのか、旨い魚がいただきたいのか、それとも馴染み客としての雰囲気を味わいたいのかは懐具合と相談である。