(巻十三)もの思ふときの雨音秋深む(笹倉さえみ)
1月17日火曜日
町内会あるのか鴨の葦長屋(潤)
朝晩の通勤で車窓から運河を眺めると鳥が何十羽と整然と漂っている。
それぞれの距離を保てり浮寝鳥(田浦佳江)
寒い日にビルの上から水面の湯気に浮かぶ鳥を見ることもある。
水鳥のあそぶは水の湯気の奥(長谷川櫂)
そこで今日はお役所回りの途中、葛西臨海公園駅で下車してお昼休みにバードウォッチングを楽しむことにした。この駅は京葉線にあり、東京方面からだと、ディズニーランドの最寄り駅である舞浜駅の一つ手前になる。
ディズニーでアヒルを見るには五千円以上かかるが葛西臨海公園は都の公園で観覧車に乗らず、水族館に入らず、遊歩道を歩いているだけならお金はかからない。
目当ての鳥見場所は入口から左手に10分ほど歩く。そこに無料のバードウォッチング・センターがある。このセンターを挟んで“上の池”と“下の池”が配されている。(上の池と下の池は名称である。)“上の池”は葦に囲まれた水面があり、一方“下の池”はほとんど水のない湿地になっている。(写真)
風はなく陽射しが豊かで絶好の鳥見日和であるがほとんど人影をみとめない。僅に超高級カメラを携えた準老人が一人二人である。
“上の池”の水面にも一羽二羽が浮遊していた。はじめはそれだけしか目に入らず、婚礼の引き出物にいただいた双眼鏡の焦点をそれに合わせた。灰色の体で首の周りが濃い茶色で頭はやや緑に見えた。
目が慣れてきて、陽射しを受けている葦の水際を見ると、居るわ居るわ!である。灰色の水鳥のほかに白い鳥も隠れていた。体が黒く頭の一部が白いダックビルのやや大きな鳥が少し離れて浮遊していた。
鴨の中の一つの鴨を見ていたり(高浜虚子)
池の端を回って二階建てのセンターの展望回廊を一回りし、展示室の資料で鳥名を確認した。灰色はホシハジロ、白はダイサギ、黒はスズカモであるということにした。ホシハジロの雄の首に茶色の飾りがあり、雌は全体がくすんだ土色である。
鮮やかな鴛(おしどり)三羽軽く浮き一羽の地味な雌に寄り添ふ(後藤進)
回廊から“下の池”を見たが鳥は見つからずであった。こちらには嘴の尖った脚の細いアオサシなどがくるのだろう。今度はその季節に訪れてみよう。
常識にこだはらないで残る鴨(高橋将夫)
小一時間の鳥見を終えて園内のレストランでえびフライ・ハンバーグランチ、珈琲付1300円の昼食。量はある。味はした。
世間(よのなか)を憂(う)しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば(山上憶良)