(巻十四)分からない道が分かれる春の山(秋尾敏)

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2月11日土曜日

我輩は二年前の秋に短い間ではあったが二度入院した。我輩も細君も重篤な病気とは思っていなかったし、事実一週間の入院二回で以後は定期的なエックス線検診だけである。

点滴のわが名逆さま日脚伸ぶ(志村宗門)

しかし、我輩は病院のベッドで細君をこのまま残しては死ねないなと思ったし、細君もどちらが残ろうが、今の一戸建てでは一人で生きて行くのに不安を感じた。そんなわけで義妹夫婦の近くにあるURへの移住という案が二年ほど前に浮上してきたのである。

孤独死の窓の汚れの余寒かな(無京水彦)

マンションの小さいのを購入すると言う選択肢もあったが、何かを所有すれば面倒が増える。それに安いマンションなんぞは資産価値がなくなり、相続と云っても負の遺産になりかねない。
URの家賃が安い訳ではないが大きな経済変動が無ければなんとか払えるので、決意して今年の年明けにURショップに行き、希望団地の希望タイプを登録しておいた。
1月末に一つ出たと連絡があり、仮予約し、内覧し、今日、住民票、納税証明、源泉徴収票を携えて契約に臨んだ。今年は二十八年の源泉徴収票が使えてURの収入基準を満たせるが来年となると不確かである。そんなこともあり、今年の内に動くことにしたのだ。

契約書条文素読日短(田中忠子)

URの壁には“高齢者歓迎”と貼り紙がしてあり、家賃の百倍の預金残高証明か家賃一年分の前払いで入居はできるようだ。聞くところでは、家を畳んでURに移住する同世代の年寄りは結構いるとのことだ。

余命とは預金残高ちちろ鳴く(野副豊)