(巻十四)音粗き迷子放送かき氷(大塚凱)

3月15日水曜日

雪にはならず済んだが冷たい雨が降った。春はまだまだか?

春遅々と先の詰まりし醤油差し(田中悦子)

醤油差しといえばキッコウマンの卓上醤油差しのデザインはコカ・コーラの瓶のデザインと同じくらい世界的に有名だそうだ。
我輩が立ち寄る中華屋では機械の油差しに醤油や酢を入れていたが、機能重視という点で見れば賢い。我輩に限っていえば油差しの醤油でも青磁の醤油差しでも味に違いを感じない。

汗の香の違ふテニス部ラグビー部(木暮陶句郎)

器の話であるが、ある長期単身赴任の爺が任期を終えて家庭に戻ったら紙の皿を出されたと言う話を聞いた。さすがに紙の皿は勘弁して欲しいと思ったが、これも味に違いを感じるからではなく、寂しさでそう思うのである。

薔薇咲くや生涯に割る皿の数(藤田直子)

例えばアイスクリームを銀の匙で食べるかプラスチックので食べるかで美味しく思う感覚がちがうという器が味に影響するという官能試験の話は知っている。

匙なめて 童たのしむ 夏氷 (山口誓子)

試したことはないが我輩の味覚では紙の皿でも、木の皿でも、ブラスチックの皿でも、金属の皿でも、陶器の皿でも同じに味わえてしまうに違いない。美味い不味いは腹の減り具合の問題だ。

淋しさにつけて飯くふ宵の秋(夏目成美)