(巻十五)ぼうふらやつくづく我の人嫌い(田中裕明)

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6月17日土曜日

旧宅の方へ廃品回収業者さんが午後3時から6時の間に来て仏壇・本棚・物干し竿など25点ほどの廃棄物品を引き取っていくことになっている。この3時間の幅は今日の第二報で1時間の枠に絞り込まれ、更に到着15分前に三度目の電話が入る手筈になっていた。
午前と午後の半分くらいが使えるので午前は柏の名医のところでお薬を頂き、海鮮丼で一杯やって、午後は柏の床屋に寄ると云う行動計画を立てた。
スーパーや飲み屋は簡単にスイッチできるが医者や床屋はなかなかそうはいかない。

血圧130ー84でまあまあか。浅野書店に降りて“角川俳句6月号”を捲るが買う気にならず。いつも感じることではあるが、宗匠さんたちは一体毎月何百句捻っているのであろうか?そんなにポンポンといい句が飛び出す訳もあるまいに。ご苦労と云えばご苦労な商売である。

春愁のもとをたどれば俳句かな(あらいひとし)

外に出て回転を止めた回転レストランを最上階にいただく閉店したままの“そごう”を見上げる。

柏そごついに閉店九月果つ(潤)

回転レストランは郊外デパートのシンボルのようなものであったが、松戸の伊勢丹の回転レストランも止まってしまったようだ。新婚の頃細君とこのレストランから手賀沼の花火大会を見たし、息子の小さい頃は三人で食事をした思い出のある場所であった。

回転をやめれば割るるしゃぼん玉(石井いさお)

西口に周り庄屋で海鮮丼をつまみに浦霞をいただく。二十代半ばの男女が隣席だ。
見てくれはまあまあの二人であるが、会話がつまらない。“昼間から唐揚げなんかよく食えるな!”“あたし大丈夫よ!”では取材にならない。お酒の方も昼間から大丈夫のようでガンガンと飲み始めた。彼女は“ゴールデン・ハイボール”を注文した。もうできている二人なのだろうが恋愛の力関係はやや男に分が在りのようだ。僅かではあるが女が媚びているし、男はサッとトイレに立ったり、アプリを覗いたりしている。
もう少しウオッチングして見ようかと、ランチ珈琲百円を頼んだ。
男:どこかあたたけえところに行きてえなあ!
女:(話に乗らず)
その後二人の会話は小声となり聴取不能となるが“父が....”と聞こえた。
色々とあるお二人なのでしょう。ここで床屋へと店を出た。床屋は空いていて待たずにやってもらった。

春の夜の立ち聞きゆるせ女部屋(吉川英治)

回収業者からは3時半から4時半と連絡があり、3時ころから旧宅で待機するも結局4時半ころとの三回目の連絡を受けた。
回収業は古物商と同じようで故買のこともあり身分証明書を先ず求められた。
次いで、見積りでお願いした25点の物品確認である。確認に合わせて用意されていたバーコードシールがそれぞれに貼られた。
ここまでが段取りで、あとは二人がかりで搬出を終えた。所要時間45分費用六万七千五百円(見積り七万二百円)であった。カーテンの容量が少なく見積りより安くなったとのことだ。

甚平やそろばん弾く骨董屋(大串若竹)

お茶のペットボトルを用意し忘れたので、“ペットボトル忘れちゃった。御免、途中で買ってよ!”と千円をご苦労賃に奮発した。

会社のお隣りのグループは海外引越しを担当しているが、業者さんたちのご苦労も少しは解っているつもりなので、ここはちょっと見栄を張った。(相方がニャっと笑ってくれたのも嬉しかったよ!)

夜回りを労ふ狐のかくし酒(佐怒賀正美)