(巻十七)借銭の山に住む身の静けさは二季よりほかに訪ふ人も無し(大根ふとさ)

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12月13日水曜日

車内のビデオ広告で吉田羊と北川景子が続いて流れたが、私は断然“北”である!なんで羊がチヤホヤされるのか分からない。
葵紫穂さんを初めAVにも美女は沢山いる。仮にAVを裏として、なぜ彼女等は裏でしかデビュー出来なかったのだろう?

裏側と言はるる眺山笑ふ(小林はるみ)


乗った電車は葛西臨海公園の大観覧車を横に見て、

観覧車回れよ回れ思ひ出は君には一日我には一世(栗木京子)

江戸川を渡り、ディズニーランドのホテルの横をすり抜け、

にがき夢二人みるため来た部屋のベッドのわきのシャガールの馬(谷岡亜紀)

東京湾のどん詰まりを過ぎて二俣新町についた。
荷風の末期随筆に描かれた原木にあるお役所にご挨拶にうかがったのである。

行年に見残す夢もなかりけり(永井荷風)

ご挨拶のあと、JR西船橋駅を通り、京成西船にまわった。途中何軒かの焼鳥屋があったが4時ではまだ支度中だ。平助の前も通ったが、支度中とは思えない沈黙であった。爺さんもついに店を閉めたのだろうか?

取りあえず京成西船から各駅停車の西馬込行きに乗った。立石あたりで一杯引っかけようかと思ったが、それでもまだ早い。
そこで思い出したのが京成八幡駅そば、踏切手前の古本屋山本書店である。途中下車した。
先ず外の一冊百円の文庫棚を点検し、
「愛情セミナー 遠藤周作 集英社文庫
「なおパイプの煙ー團イクマ 朝日新聞社
を抜き出してから店内に入った。
店内にはかなりの文庫本が所蔵されていたが、値段との折り合いから
「この結婚ー林えり子 文春文庫」二百五十円を選んだ。
パイプの煙は名随筆と云われているので出逢えて嬉し。遠藤周作のはちょっとしたはずみで買ってしまった。
林えり子氏を知らないが、捲ってみたらおもしろそうなので買った。題名の添え書きに「明治大正昭和の著名人夫婦70態」とあったのに釣られた。
店内には30分ほどいたが、その間に老人一人と老婦人一人が店主と本の処分の相談をしていた。それぞれ終活の蔵書整理のようである。
老人の方は店主が先生と呼んでいたのでそういう方なのであろう。見積りに行くということで一応話はついたようだ。老婦人の方は子供の頃両親から買い与えられた文学全集の処分を相談していた。老婦人は「全然読んでいませんから、きれいです」と読んでいないことを売りにしていたが、店主は全く乗り気ではない。「それじゃ、兎に角一冊持ってきてくださいな、引き取れるものかどうか見てみますから。」と言ってしのいでいた。
勘定のときに「ああいう相談よくあるんですか?」と訊くと、お前もかと、 やや警戒気味に、そしてやや吐き捨てるよう
「しょっちゅうですよ。」と返された。

捨てられぬ本動かして年の暮(小島健)

こんな面白い話を小耳すれば作家志望の老人の血は騒ぐのである。

小説を書きたくなりぬ枯木宿(吉野佳一)

立石のモツ焼き屋ではうるさくて筆が進まないと思い、青砥で降りてあまり流行っていない店に入った。
今5時45分であるが、カウンターには私だけである。
ポッピーを置いていないので日本酒にした。つまみは先ずシメサバで入り、二杯目で絵になりそうなベーコンエッグを頼んだ。目玉焼きにベーコンをイメージして頼んだが、玉子とじにベーコンが混ざっているものが出てきた。

冬晴や醤油をはじく目玉焼(彌栄浩樹)