(巻三十六)冬浅し心に詩(うた)あるものの幸(鷹崎由未子)

(巻三十六)冬浅し心に詩(うた)あるものの幸(鷹崎由未子)

5月14日日曜日

曇り。図書館から予約本4冊が揃ったとメールが入る。

朝家事は洗濯、外干し。エアコンのフィルター掃除。その後図書館で4冊借り、ついでに生協に回り菓子など1200円ほどを買う。ミルク飴、歌舞伎揚げ、豆大福2個、草餅2個、ナッツ小魚、安売り菓子パン(スナック・ゴールド・ミニ)、缶酎ハイ1本。あまり店で飲みたいと思わない。明るいうちから飲んでそのあとず~とグッタリになるので困る。その分が駄菓子に回った。。

猫との面会はトイちゃんだけ。トモちゃんもクロちゃんも不在。

昼飯喰って、一息入れて、瞑想いたす。

瞑想を解くと細君が雨が降りだす前に米を買ってきてくれと云う。

それならついでに借りた本のうち三冊を返しちゃおうと午前と同じコースを歩く。トモちゃんと遊べた。

申し訳ないが、読む気のない本には早いところお引き取り願うのだ。

昨日、今日と読んだ「アゲイン-木田元」はなかなか上手い雑文だったが、今日借りた同氏の「哲学散歩」は手に負えなかった。

随筆(紀行・書評・雑文)を読み始めたころは読む物が尽きるなどとは思わなかったが、ここに来て好みの背丈にあった作品との出会いが減ってきた。

お薦めがあれば御教示賜りたい。

願い事-涅槃寂滅、即死でお願いいたします。生きていたい方はどうぞ長生きしてください。あたしゃもう楽に逝きたい。

木田氏のお話はよかった。で、意外な方のニュー・ミュージック談義をまた読み返してみた。

「冬眠日記[抄] - 大岡昇平」日本の名随筆別巻82演歌 から

年の瀬にちあきなおみの演歌聞き

あぶつた烏賊と人肌の酒(をがはまなぶ)

「冬眠日記[抄] - 大岡昇平」日本の名随筆別巻82演歌 から

一月九日 水曜日 曇

漸く寒気到り、外出できず、暮の三十一日の午後、駅まで散歩して以来、蟄居。正月三日より寒い日はじまる。午後一時~三時、暖かい間に客に会い、娘、息子夫婦、孫たちと遊ぶだけ、あとは寝て本ばかり読んでいる。天気よく暖かい日の、同じ時間帯にたまに机に向う。書くか読むかのほかに、することなきなり。かつて正宗白鳥先生が、最後まで読書欲旺盛、執筆絶えざりし心理のいくぶんかがわかる。ただし筆者は先生よりよほど早く病弱になり、ぼけてしまった。

風邪がこわい。わが心不全は弁膜症から来る心房細動というやつにて、同病者に澤地久枝女史あり、女史の方が重症だが、驚異的に動き回り、書きまくっている。若さの力なり。うらやましきことなり、こっちは齢だからだめなのなり。

暮の十八日以来、ずっと休息、遊んでいるから、体調少しいいような気がする。「現代詩手帖」年末座談会にて天沢退二郎氏の発言の中にシンガー・ソングライター中島みゆきの名あり。「シンガーなんとかってなんだ」と娘にきいたところ「ずれてるわぬ」といって、ごっそりレコードを持って来てくれた。中島みゆき、アリス、松山千春などなど。ニュー・ミュージックといわれて、テレビには出ず演奏会レコード主義にて、アリス三人組の如きは演奏会年間百五十回。つまり三日に一度、全国をぶって廻っている由。自ら作詞、作曲し、歌うのだから中間搾取なし。「アリス」の名前は知らなかったが、「君の瞳は一〇〇〇〇ボルト」は知っていた。

中島みゆき悪くなし。「時代」「店の名はライフ」など、唱いぶり多彩、ひと味違った面白さあり。詞の誇張したところは抑えて唱い、平凡なところは声をはる。歌謡曲とは逆になっているところがみそか。もっともニュー・ミュージックは七八年がピークにて、いまは歌謡曲とあまりかわらなくなりつつありとね説あり。しかしアリスの年間収入五十五億円、来年は地方に演奏会場を持つとのうわさありとは驚いた。

知らない客にドーナツ盤をきかせて、暮から得意になっていたが、新しがり屋の埴谷雄高だけは、中島みゆきのヒット曲「わかれうた」の題名まで知っていた。しかし高石友也岡林信康など、フォーク以来の系譜を扱った富沢一誠『ニュー・ミュージックの衝撃』(共同通信社)は知らず、抑えてやった。

「アバ」がレコード売上第一位になったと聞き、LPを買った。女声二男声二の四人組なれば、音に変化あり。残念ながら、音楽は外国種の方にいいようなり。

二月十五日 金曜日

依然として寒し。寝床にもぐっているのが、少しいやになって来た。午後三時、「海」の高橋善郎君より電話。水上勉の母君、亡くなられた由。八十二歳。水上は軽井沢より若狭へ直行という。成城の留守宅に電話。奥さんに弔意を伝う。水上はこの頃、よく郷里へ帰って、孝行しましたので、と奥さんいう。その通りだ。近頃若狭名物となりつつある原発について、「おそろしいことおこっとるで」との村の老人の言葉をどこかの新聞で報告していた。

四時、埴谷雄高電話して来て、新田次郎の急死を伝う。彼は吉祥寺隣組にて、夕刊より少し早耳なり。風邪を引いていて、突然、心筋梗塞を起したとのこと。風邪に気を付けろ、との忠告つきなり。

私は先月高熱を出したが、案外早く瘉った。その後、とにかく風邪を引かないこと専一に、籠っているから、その後は無事。

新田氏の富士山頂の測候所員の生活を書いた作品に感服したことあり(毎夏、山小屋で、測候所の建物を仰ぎ見て暮している)。文芸家協会理事会にて一度お目にかかったことあるだけなれど、文士には珍らしく誠実なる実行家の風格あり、ひそかに敬意を払っていた。惜しい人の死亡相継ぐ。

埴谷は十三日、武田百合子さんの「犬が星みた」の読売文学賞受賞会に出席。銀座、六本木と三次会まで付合った由。彼は心筋そのものではないけれど冠状動脈狭窄にて、そんなことをしてはいけないとこっちは忠告する。

八時、テレビにて「三年B組金八先生」を見る。テーマソング「贈る言葉」を武田鉄也扮するところの先生自ら歌う。シンガー・ソングライターの新手なり。受験日、妊娠女子出産重なり、長面短躯の日本的先生、活躍す。中学生の両親殺傷、教師暴行横行の世の中に少し綺麗事すぎるようなれど(センコーと呼ばせないのではほんとうらしくない)、人気上昇、同時間の退屈な刑事番組「太陽にほえろ」を食いつつあるのは目出たし。金八先生とは金曜日八時より名付けたるという。

十六日土曜日曇

終日、ベッド。三時半、ニッポン放送のドーナツ盤売上げベスト・テンを聞く。うち歌謡曲沢田研二TOKIO」の九位、小林幸子「とまり木」八位、五木ひろし「おまえとふたり」五位のみ、あとの七つはニュー・ミュージックとはなんとなくいい気持なり。一位、クリスタル・キング「大都会」がダントツ(断然トップが段違いトップか)にて、折柄受験シーズンにて、景気のいい歌いぶりがもてるとの説あり。二位、オフコース「さよなら」。三位、財津和夫「ウエイクアップ」、久保田早紀の「異邦人」は先週までの二位から四位に落ちた。いずれもリズムに変化あるのが特徴(いい加減で暖かくなってほしい。生活のリズム変えたい)。ただし「別れ」の歌ばかりなること、面白くなし。

このうちクリスタル・キングと久保田早紀がテレビへ出るから、歌謡曲と見なせる。南沙織が引退してから、歌謡曲番組見たことなけれども、ニュー・ミュージックで、少し聞く気になった。ドーナッツ盤買わされている。