本日の句歌

句歌控帳「立読抜盗句歌集(巻七)」


セーターに首入れ今日を始めけり(三浦善隆)


巻七の巻末です。後程巻七を一挙掲載いたします。


証明書用の写真を撮る羽目になり、出来上がりを見て落ち込んだ。
すっかり老人である。
個人差あるにしても、随分と先を独走している。

この顔が死後の顔かと思いつつ手術の朝の髭を剃りおり(小倉太郎)


まあ、いいか!
一杯やって気分転換だ。
通院した細君からは、「弁当を買って帰るように」、と指示が出ているので、京樽で寿司でも買いましょう。


鷹のつら きびしく老いて 哀れなり (村上鬼城)


少なくとも、そのようなつらではなく、むしろ“ボーッ”としたつらの老人になれたことに感謝して祝杯を上げよう!


今晩のNHKアーカイブスは、作家ではなく、NHKのアナウンサーであった藤倉修一氏のエピソードと番組録音であった。

藤倉氏の語り口はともかく、あるドキュメンタリーで藤倉氏が昭和21年に録音した一市民の音声が焼き付いた。
その音声は浅草ジャングル横丁を取材したときのもので、
むしろ敷きの四畳半に母親と四人の子供が暮らす一家から、藤倉氏が話を聞いたときのものだ。
極貧の暮らしを語る母親の何と品のよい話ぶりなことか。
いや、多分その頃の話し方としては、決して上品なものではないのかもしれない。
だが、今の私の耳にはとても淑やかで優雅にさえ感じられる日本語でした。

以前、ラジオドラマ「君の名は」の会話に感動したが、あれは脚本である。
今晩聴いた、ジャングル横丁の未亡人の声は、本当の生の声でした。

あの頃の方々は、極貧の中でも、あのような美しい話し方をしたのだなぁ!


美しき言葉遣ひや菊日和(若杉朋哉)