(巻十四)身の内に悪しき細胞宿す吾がそれに負けたる死者の葬儀す(岡田独甫)

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4月9日日曜日

老後ばなしは受けないのであろうが、なるほどひとつの理屈だなあという話を聞いた。

細君の同級生は子育てを終わり寡婦となったが、今は彼女の寡夫となった実父九十余歳と同居して十数年面倒見ているそうだ。
“育てて貰ったんだから恩返しネ?”細君が言うと、
“もう十分返した!”と
憤慨するそうだ。
恩にも貸借対照表はあるかもしれない。金銭は別にして、オシメを考えると一年以上は子供の過払いになるな。反対にポックリ逝けば“恩”の字ということだ。

「わが子には世話にならない生き方」を売る人がいて買う人がいる(中川陽子)

息子が移住先で泊まってみるといいはじめて、必需品運搬のシェルパとして随行した。
荷物を卸し、昼飯は“吉楽”でカツ丼をいただいた。さして混んではいない店でテレビを見ながら一杯やっていると長寿番組の“新婚さんいらっしゃい”が流れていた。今は“文枝”などという大名跡を手に入れた“三枝”が山瀬マミと司会をしていた。三枝のMCスタイルは数十年前とあまり変わっていないが、新婚さんたちのお笑い芸人並みの受け答えに時の流れを感じた。ほとんど夫婦漫才と三枝の掛け合いである。夫婦漫才といえば京唄子師匠が亡くなれたそうですな。

秋の夜の漫才消えて拍手消ゆ(西東三鬼)

“新婚さんいらっしゃい”のあと、これも長寿番組の“アタック25”を見た。新学期ということもあり、学校の先生四人が回答者であった。暇になった“吉楽”の店主と我輩も回答者になったつもりで正解を争うことになり、勢いで余計な一本を追加した。

長寿税有るやも知れず亀鳴けり(伊藤杯紅)

店主に今度、近くに越してくることを告げて、近所の様子などを尋ねてみた。そうこうするうちに“アタック25”も終わり、広島カープヤクルトスワローズの中継に変わった。店主は国鉄スワローズの頃からのスワローズファンとのことだ。ジャイアンツファンよりはいいか。
夜は8時までとのことなので、帰りに一杯にはちょうどよい店かもしれない。

春の闇自宅へ帰るための酒(瀬戸正洋)