(巻三十三)悪茄子の頓着せずに花盛り(太田土男)

(巻三十三)悪茄子の頓着せずに花盛り(太田土男)

7月13日水曜日

掃き掃除、窓拭きをした。細君はテレ友と歓談していたが見たところ(聞いたところ)七分三分で細君が喋っていた。お友達の我慢に感謝します。

囀りの耳を澄ませば愚痴少し(鈴木淑生)

午後も雨で外出せず。

不当たりの中から「妄想老人日記-野坂昭如」をつまんで捲ってみた。世紀末の野坂昭如氏七十歳前後の日記だ。

血圧についての記載がよく見られるが180なんぞという数値が時折記されている。とにかく忙しい日々で作家としてだけでなく歌手としても動き回っていて、加えて飲む打つ買うだ。バイアグラまで飲んでプロ・アマ問わず挑んでいらっしゃるが、どうも長身の方が好みのようだ。その一方で孫と遊び、犬を可愛がっている。意外なのは金がない金がないと愚痴っていることで、奥さんに遺してやる財産がないと嘆いている。

うつむいて歩けば桜盛りなり(野坂昭如)

夕食に長崎牛のすき焼き用を塩・胡椒でサッと焼いたものが出た。八月・九月が夫婦の誕生日なのでそう言うことにしたようだ。先週は切り落としを買ってきたが脂身が多くて失敗したと言っていたので今回はおごったのだろう。鰻も食いたいが一串で買えるかと言うので、二人で並んで一串というのは淋しいが一人暮らしの婆さんが一串買うのならなんでもないことだと申す。わたしゃ尻尾を少しで十分だ。

願い事-電球が切れるが如くで細君より先にお願い致します。怖くない、怖くない。

世の中は騒然としているが、七十歳までの二三年を遁世して過ごせたことはありがたい。このまま静かに終われれば恩の字だが、さて行く末の丁と半だ。

寒月やさて行く末の丁と半(小沢昭一)

野坂昭如さんは長患いしたようだが、わたしゃコロッと逝きたい。長生きすれば金が掛かる。金の心配をしながら生きているのは嫌だ。

図らずも泣いて出てきた道化の世すまぬすまぬと生きたくもなし(辞世)