(巻十五)汗をもて問診に嘘ひとつ言ふ(久保東海司)

そろそろサボッて日比谷図書館に“俳句界”を読みに行きたいのだが、なかなか隙を見つけられない。親分も姐さんも会議会議で忙しい。誰もいないのはまずいので我輩が留守番電話番である。専ら内線なので、“会議で席を外しております。お電話を頂きましたことは伝えます。”との応答だけではあるが。

風邪声で亭主留守です分かりませぬ(岡田史乃)

帰路、車内で座れたが前に立っている四十代の爺が、“この電車は次の駅で時間調整のため停車いたします。”とか“上野駅で緊急ボタンが扱われましたのでこの先遅れが見込まれます。”とか独り言をブツブツと言っている。いつバッグからナイフでも取り出して、刺してくると心穏やかではなかった。

爽やかや機嫌よき子の独り言(稲畑汀子)