ゼロ戦ーパート2

聞くところによれば、税関さんに相談に伺ってから丸二日経つがお裁きが下らないとのことである。
お裁きと筆を滑らせてしまったが、これは正しくない。輸入納税申告の前に相談し教示を受けに行ったが教示が得られないと言うのがより正確であろう。
これは“事前教示”と言われているが“教示”は行政処分ではない。
“事前教示”については関税法第七条第3項に次のように規定されている。

3、税関は、納税義務者その他の関係者から第1の申告について必要な輸入貨物に係る関税定率法別表(関税率表)の適用上の所属、税率、課税標準等の教示を求められたときは、その適切な教示に努めるものとする

平たく言えば、納税する人が税率や申告価格が判らなくて訊きに来たら、教えてあげるよう税関は努力します。
という程度の努力規定なのであります。
ですから、教示の内容についての行政法令に基づく不服申し立てはできません。いわんや、回答が遅いと訴えることはできないでしょう。
もっとも、税関の方でもほったらかしはよろしくないと思っているようで税率回答について言えば二週間を目標にしているようです。

さて、ゼロ戦残骸の輸入者さんは港に置いたままだと保管費用など経費が増えて行くので、とりあえず免税での申告を止め、納税して通関し、後日税金の払い戻しを受ける手続きを取ることにしようかと考えたと聞いておりますが、後日更正請求しようと言うお考えでしよう。
残念ながら、この申告の流れでは更正請求ができません。
関税関係法令に照らしながら、何故かを、個人的な見解として、申し上げる。

先ず、輸入貨物に免税の適用を求める場合は、その輸入申告のときに合わせて免税申請を行わなければならず、輸入の許可を受けた後で免税申請をすることはできない、つまり後出しはダメと、と関税定率法施行令第十三条に規定されています。

(免税の申請)
関税定率法施行令第十三条

法第十四条(無条件免税)の規定による関税の免除を受けようとするものは、輸入申告書の提出を必要とされている貨物については、当該輸入申告書(特例申告貨物にあつては、特例申告書)にその免除を受けようとする旨を記載しなければならない。

更に、更正請求については関税法第七条の十五で次のように規定しています。

(更正の請求)
第七の十五
納税申告をした者は、当該申告に係る税額等の計算が関税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告により納付すべき税額が過大である場合には、.....

つまり、税額の計算に誤りがあった場合には払い過ぎの税金を戻して下さいと請求できるとしています。

ゼロ戦残骸を納税して輸入許可を受けた場合には、納税した税額については誤りはないわけで、更正請求はできないと言うことです。

免税申請をせずに申告して許可を受けたのは申告者の意思であり、その税額が過大でなければ、戻す言われないと言うことでしょうか?

経済性を無視して戦えるだけ戦いたいと言う方がいらっしゃるかもしれませんので、後日、興が乗れば駄文を草したく存じます。