(巻三十四) 贅沢な人の涼みや柳橋(正岡子規)

(巻三十四) 贅沢な人の涼みや柳橋(正岡子規)

9月4日日曜日

生協に豚肉もも薄切り、鮭の切身、食パンを買いに行く。秋刀魚をみとめる。今年は秋刀魚がいないいないと騒いでいないからいるのかな?

尾頭に分けて二人に足る秋刀魚(尾亀清四郎)

他に自分用の納豆、牛乳、ヨーグルト、甘納豆、柿ピーを買う。

今日は俳壇に書き留めたくなる句があった。

のぼりつめすこし休んで咲く花火(伊藤志郎)

自分とは何か分らず老いの秋(橋本直樹)

昼寝して散歩。南の方へ歩き、白鳥生協をのぞく。寿司、焼そばを眺めるが食い気起こらず。ファミマでアイス珈琲を喫しておとなしく帰宅。

顔本に俳人の高澤良一氏が以下の文を載せていた。高澤氏が山藤氏の見方を乱暴と評しているようだが、山藤氏の論は「オモシロイ」。早速図書館ネットで予約した。

《ヘタウマ 乱暴きわまりないこの言葉

山藤章二著 ヘタウマ文化論 を読んで

2013・2・20 岩波新書

先づ、ちょっと長くなるが、ヘタウマ文化論なるものの肝を最初に抜き出して見る。

それに、俳句のジャンルでは、どのような作家が該当するのか二人ばかり挙げてみる。

「ウマい」「ヘタ」「オモシロい」

ずっと昔から、「一芸に秀でる」ということは、他人より抜きん出てウマくなることだった。「ウマい」の反対語は「ヘタ」。上達するとは、ヘタな所からウマい所へ上ってゆくことと決まっていた。つまり二極を結ぶひとすじ道である。

ところが、いつの頃からか、この「二極」の道とはまったく別の尺度が出現したのである。「第三極」=「オモシロい」という極が。いままで「ウマい」⇄「ヘタ」の一本道が絶対的尺度と誰もが思っていた所に、むくむくと第三の極が隆起して来た。

「オモシロい」。この新興の言葉は音の軽さとはウラハラに内容としては馬鹿にならない。便利であり、安易であり、曖昧であり、現代である。「ウマい」⇄「ヘタ」の二極を「旧街道」とするならば、旧街道は上り坂ばかりでシンドい。時間もかかる。と厭っていた世代の多くは 、平坦で時間もかからない「新街道」を選ぶようになった。この道は先述したように判断基準が曖昧である。仮にメディアで力を持った誰か(編集者とかディレクター のような立場のひと)が「オモシロい」と感じたら、同レベルの大衆も呼応して、たちまちメディアを席捲する。その頃「旧街道」を、地を這うような努力で歩んで来た連中は追い越されたような気分になる。

この「オモシロ現象」は当初、一過性の流行だろうと思っていたのだがそんなことはなかった。いまや、芸術、芸能、サブカルチュア全般にわたって「第三の極」として地盤を固めた。

(中略)

「ウマいやつ」は時間がかかるから滅多に出ないが、「妙なやつ、オモシロいやつ」はヒョンな所から現れる。クリエイティブな世界では不可欠の要因なのかも知れない。

(中略)

視点を少しずらしてみる。「ウマい」⇄「ヘタ」の尺度は万国共通だと思うが、「オモシロい」に関しては、日本はよその国より、〝寛容〟なのでは、と言う気がする。例えば「オモシロい」を英訳するとなると、そう簡単ではないように思う。インタレスティング、アトラクティブ、エンターテイニング、ファニイ、ユーモラス、…私の乏しい語彙ではどれも相手に通じなさそうだ。この「曰く言い難い」言葉を、われわれ日本人はいとも無雑作にやりとりしているのだから、この国の文化度は、成熟しているのか、いい加減なのか 、よくわからない。

さて 俳句の方で該当する御仁と言えば…以下であろうか?

坪内稔典

陰毛も 春もヤマキの 花かつお

春の暮 御用御用と サロンパス

春昼の 紀文のちくわ 穴ひとつ

春の坂 丸大ハムが 泣いている

ボンカレー 匂う三月 逆上がり

五月闇 日清サラダ油 揺れに揺れ

春風も 大阪瓦斯も 魚なぶる

池田澄子 

夕月やしっかりするとくたびれる

太陽が仕事している猫やなぎ

性格のよからんいそぎんちゃくぴんく

茄子焼いて冷やしてたましいの話

夏落葉どこに居ようと年をとる

山椒魚ついつい山椒魚を産み

豆の莢からぽろぽろっと生まれたし

青嵐神社があったので拝む

さらしくじらしみじみ白し雨になる

ピーマンを切って中を明るくしてあげた  

よし分った君はつくつく法師である

蓋をして浅蜊をあやめているところ

以上》

私としては、坪内氏、池田氏の引用句よりオモシロイ句はもっとあるように思う。

世の中を少しづつずれ葱を噛む(山藤三魔)

畏れ多くもではあるが、丸谷才一氏を真似て「古希七十句」を貼り出そうかと準備している。表紙の写真にペイントで『古希七十句』と入れようと足掻いているが、思うようにならない。ま、それでもいっか。

https://nprtheeconomistworld.hatenablog.com/entry/2022/01/01/101322

願い事-ポックリで叶えてください。

長生きか死に後れしか山椒魚(鷹羽狩行)