(巻十二)噴水の止まれば取るに足らぬ池(新子禎自)

10月13日木曜日

“努力”を含む俳句を検索エンジンで探してみたが、

忘るるに使ふ努力や藪からし(鈴木鷹夫)

の一句だけであった。
俳句には努力という文字はないようである。なぜ“努力”を探してみたかというと。

ある夕刻の始発駅の車中に疲れた少年を見た。体格から中学の一年生であろう。制服を着ていなければ小学生とも思える華奢な少年である。華奢であり疲れた少年である。
少年は一つだけ残った老婆とおばさんに挟まれた空いている席に気付くと背負った重いリックを横揺れさせ、吊革に掴まる人の間を縫ってその席の前に立ち、リックを下ろし席に座った。
座った少年の顔をあらためて見たとき、赦す気になった。
疲れた少年は居眠りでもはじめるのかと見ていると、リックを開けてノートを取り出して捲り始めた。そして一駅で少年はリックを抱えてあわてて降りて行った。

鯉幟影のじたばたしていたり(山田真砂年)

寸暇を惜しんで努力しているのは、美しいということになっていて“努力に勝る天才なし!”などと言われているが、“大谷翔平”選手など見るにどうも才能に勝る努力はないようだ。

音楽で食べようなんて思うな蚊(岡野泰輔)

努力して俳句を作るなんてきっとあり得ないことなのだ!

あらかたは二番煎じに初時雨(加藤郁乎)