(巻十四)追伸に大事を告ぐる寒見舞(洞庭かつら)

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3月4日土曜日

町内会の花見の会申込みが回覧されてきたが、そんな季節になったのか。桜は1ヶ月先だが、喰わずに咲かせた菜の花はご覧の通りである。

菜の花を挿すか茹でるか見捨てるか(櫂未知子)

角川俳句3月号から次の句を書き留めた。

春の夢みているやうに逝きにけり(西原仁)

信ずれば平時の空や去年今年(三橋敏雄)

カステラにフォーク突き刺す秋思かな(土居小夜子)

句帳の選り抜き帳がいっぱいになってきたので乗り換え駅の書店文具店に次を買いに出掛けた。カバー付きの手帳は千二百円であるが入れ換えノートは五百円である。選り抜き帳の改選なので差し換えにしておいた。

出掛けたついでに昼酒を舐めにいつもの店に立ち寄った。ほぼ満席で八十歳くらいの紳士二人の隣に席を取った。
話の内容から旧制中学の先輩後輩のようである。二人とも血色よろしく酒は呑むし煙草プカプカである。“ときちゃんは素晴らしい”とか一生懸命に名前を思い出しながらの会話であるが、後輩の八十路は終始敬語である。互いに十分解っているいる話をしているので傍聴者には全く掌握不能であるが、浅草の猿若町界隈の出のようである。芝居小屋の名前を思いだそうしている。どうも名前を思い出せないのは後輩のようで先輩が名前を出すとその度に恐縮して“だめだな~、私は”と嘆き、先輩は“みんな同んなじだよ”と慰めている。後輩は少なくともお銚子三本目に入った。手元は全くしっかりしているが気分が少し昂りはじめてきた。月に一回くらい知っている奴を呼んでやりたいものだ、勝っちゃんにも声かけてみようか?と話は進んでいくが、後妻を迎えた同窓生の話に及んだ辺りで我輩は店を出た。

老二人花橘に酔泣きす(加舎白雄)