(巻二十三)東京の我が敗北の市街地図(斎藤冬海)

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8月31日土曜日

男の子は深夜に帰ってきたようだ。どこかの会議か行事に参加した帰りのようで、洗濯物がたっぶりと出してあった。
雨中を歩いたようで濡れたズボンまで出してあったが、これは明日までにはとても乾くまいとのことになり、アイロンをかけて誤魔化すことにした。
雨に濡れた男の子は風邪を引いたと云って一日中寝ていた。

あたしは午前中に生協へ買い物に出掛けた。今日の買い物リストにはないが、さんまの新物が出ていた。あまり大きくないねが三尾で六百円くらいだ。
 
いのち焼く香のかぐはしく身はうまき秋刀魚をくらふ秋はまた来ぬ(島田修三

本

「偏奇館炎上(後半のみ) - 江藤淳新潮文庫 荷風散策 から

《 「今日まで余の生計は、会社の配当金にて安全なりしが今年よりは売文にて餬口の道を求めねばならぬやうになれるなり、去秋以来収入なきにあらねどそは皆戦争中徒然のあまりに筆とりし草稿、幸に焼けざりしをウ[難漢字]りしがためなり、七十近くなりし今日より以後余は果して文明を編輯せし頃の如く筆持つことを得るや否や、六十前後に死せざりしは此上もなき不幸なりき、老朽餓死の行末思へば身の毛もよだつばかりなり」と述懐している。》
 
荷風の最晩年の生き方を拾って参りたい。